人は、暑い時や運動した時など、体温調節のために汗をかきます。しかし、体温調節がいらない時でも大量の汗をかいてしまう症状を多汗症と言います。

　多汗症は、ワキや額、手のひら、足の裏で発症しやすく、原因の分からない「原発性」のもの、内科的疾患・外傷・腫瘍などによる「続発性」ものと、その原因はさまざまです。

　人の身体には、「アポクリン腺」と「エクリン腺」と呼ばれる2種類の汗腺が存在し、多汗症の原因となるのは「エクリン腺」から分泌される汗です。

　「エクリン腺」から分泌された汗は、水分と塩分で構成され、無色でニオイもありません。ところが、皮膚表面に付着している皮脂や汚れと混ざり、皮膚常在菌によって分解されるとニオイが発生します。

　また、衣類の汗ジミ、黄ばみなどの原因となるため、日常生活に影響がでることがあります。

　原発性腋窩多汗症（げんぱつせいえきかたかんしょう）は、多汗症の中でも、腋窩（ワキの下）から汗をかく症状です。

　ニオイや汗ジミの原因となり、着たい服が着られなかったり、人からの印象を左右してしまったりと、日常生活で困るほどの症状が現れます。

　原発性腋窩多汗症は、日本人の20人に1人はかかる、決して珍しくない病気です。ところが、体質の問題と受け止め、症状を放置してしまう方が多くいます。

　近年では新薬も登場し、適切に治療を行うことで改善できる症状です。症状が気になる方は、多汗症かどうかチェックして、正しい治療でトラブルを解消していきましょう。

　「エクロックゲル® 5%」は、2020年11月に発売されたばかりの新薬です。塗り薬なので使いやすく、12歳から使用可能となっています。

　単剤で使用した際、80％の方の「発汗が抑えられ」、60％の方が「日常生活に支障が無くなる程度まで改善した」という臨床結果がでており、高い効果が期待できます。

　ワキに塗るだけなので重大な副作用もなく、安心して使えるのも特徴です。

　多汗症の原因となる汗は、交感神経からでるアセチルコリンという物質が、「エクリン腺」という汗腺を刺激することで分泌されます。

　「エクロックゲル® 5%」は、アセチルコリンによる刺激をブロックして、過剰分泌される汗をコントロールします。

　治療開始から約1～2週間と、短期間で効果が現れ、その後使用を継続することで少しずつ効果が増していきます。毎日の使用で徐々に効果を感じる薬のため、医師の指示をよく守り、継続して薬を使用することが大切です。

　「ラピフォート®ワイプ」は、ワイプ型の塗り薬で、9歳から使用可能な治療薬です。1日1回使い切りタイプなので、簡単かつ衛生的に使用できます。

　「ラピフォート®ワイプ」は、「エクロックゲル®5%」と同じように、汗腺の「汗を出す指令」をブロックしてくれます。根本から発汗量をコントールするため、高い効果が期待できます。使いやすく、副作用もほとんどない、安全性の高い治療約です。

　使用方法については、【ラピフォート使用手順】を参考にしてください。

　ボトックス注射は、“シワ取り治療”として知られている美容治療のひとつです。

　タンパク質の一種であるボツリヌス・トキシンから作られた製剤を使う治療で、一過性の筋肉麻痺を起す作用があります。この作用を利用することで「エクリン腺」の働きを抑制して、汗の分泌量を抑制します。

　1回の治療で3～6か月程度持続するので、特に発汗が気になる夏前に治療することで、快適に夏を過ごすことができます。

　当院のボトックス注射は、厚生労働省に承認されている、安全性の高いアラガン社製の「ボトックス ビスタ®」のみを使用しています。