粉瘤の手術は健康保険が使える?3割負担での費用目安と診療報酬点数を皮膚科専門医が解説

粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質などが溜まる良性のしこりです。「保険で治療できるのか」「いくらかかるのか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。粉瘤の手術は、原則として健康保険が適用されます。
本記事では、診療報酬点数に基づいた3割負担での費用目安、術式の違い、感染した場合の対応、自費との違いまで、皮膚科専門医の視点で分かりやすく解説します。
なお、本記事の費用や点数は2026年5月時点の参考値です。診療報酬は改定により変動するため、最新の点数表および受診される医療機関の窓口でご確認ください。
結論|粉瘤の手術は健康保険が適用される疾患

粉瘤は医学的に「皮膚の良性腫瘍」として扱われる疾患であり、その摘出手術は健康保険の「療養の給付」の対象となります。3割負担で数千円〜2万円台に収まるケースが多く、まずは皮膚科での診察が費用面でも医学的にも合理的な選択です。
粉瘤は「皮膚の良性疾患」として保険診療の対象
粉瘤の医学的な正式名称は「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」、または一般的に「アテローム」とも呼ばれます。皮膚の中に袋状の構造(嚢腫壁)が作られ、その中に角質や皮脂が溜まって徐々に大きくなる良性腫瘍の一種です。日本皮膚科学会や日本形成外科学会の疾患情報でも「皮膚の良性腫瘍」として明確に位置づけられています。
健康保険法では、疾病や負傷に対する「療養の給付」が定められており、医学的に治療が必要と判断される疾患の診察・処置・手術などは保険給付の対象となります。
粉瘤は「単なる美容上の悩み」と誤解されがちですが、放置すると感染や巨大化などのリスクを伴う立派な「疾患」です。そのため、診断から手術にいたるまで、原則として保険診療で治療を受けられます。
3割負担での費用目安
3割負担の場合の窓口負担は、粉瘤摘出の手術代金のみであれば、おおむね5,000〜20,000円程度に収まるケースが多く見られます。
これは2026年5月時点の診療報酬点数を参考に試算した概算です。この手術費用に加え、初診料・再診料・処方箋料・薬剤料・病理組織検査料などが別途加算される点にはご留意ください。小さな粉瘤を早期に切除する場合は数千円程度で済むこともありますが、大きく育ってしまったり感染を伴ったりするケース、複数回の通院が必要な場合は総額が高くなります。詳細な算定根拠については後述します。
自費になるケースは限定的
「粉瘤の手術は自費」と誤解されがちですが、医学的な治療目的であれば原則として保険適用です。自費診療となる典型例は、医学的必要性が乏しく、純粋に整容のみを目的としたケースです。ただし、医療機関によっては保険適用外の機器や特殊な手技を提供しており、それを選択する場合は自費となります。判断は医師の診察と患者さんの希望を踏まえて医学的に行われます。
基礎知識|粉瘤とはどんな疾患か
粉瘤は「皮膚の中にできた袋」です。ニキビとは根本的な構造が異なるため、自然に消失することは基本的にありません。ご自身で潰したり膿を出そうとしたりする行為は、感染の悪化や傷跡(瘢痕)形成のリスクを高めるため、皮膚科での適切な摘出が推奨されます。
粉瘤の正体は「皮膚の袋」
粉瘤は、本来であれば代謝によって剥がれ落ちるはずの表皮成分が、何らかの理由で皮膚の下に袋状に取り残されることで生じます。袋の内側からは絶えず角質が作り出されて蓄積していくため、時間が経つにつれてゆっくりと大きくなっていくのが特徴です。しこりの中央部に小さな黒い点(開口部)が見えることがあり、これは粉瘤を見分ける重要なサインの一つです。
よくニキビと混同されますが、ニキビは毛穴の炎症であり、多くは時間の経過とともに自然治癒します。一方で粉瘤は、この「袋」ごと取り除かない限りは根本的に消失しません。似たようなしこりとして「脂肪腫」が挙げられることもありますが、脂肪腫は脂肪細胞が増殖した良性腫瘍であり、粉瘤とは構造が全く異なります。確定診断には、皮膚科専門医による視診・触診、必要に応じた超音波検査が行われ、摘出後は病理組織検査による確定診断が行われます。
できやすい部位
粉瘤は全身のどこにでも発生しますが、特に顔(頬・額・耳の後ろ)、首、背中、お尻、陰部周囲によく見られます。年齢や性別を問わず、どなたにもできる可能性があります。
実は、発生する部位によって手術の難易度や診療報酬点数の区分(露出部/非露出部)が変わるため、費用にも影響を与えます。「露出部」とは、おおむね首より上、肘より下、膝より下など、普段の衣服から露出している部分を指します。これらは傷跡が目立ちやすく、手術の際にもより繊細な整容的配慮が求められるため、点数が高くなる傾向があります。
放置するとどうなるか
粉瘤は放っておいても自然に治ることはなく、経過とともに以下のようなリスクが生じます。
まず、サイズが徐々に大きくなることで、切除範囲が広がり手術の難易度や費用が増してしまう点です。次に、隙間から細菌が侵入して感染を起こすと、急激に赤く腫れ上がって激しい痛みを伴う「炎症性粉瘤」へと化膿し、緊急の切開排膿処置が必要になる場合があります。さらに、袋が皮膚の下で破裂すると、溜まっていた内容物が周囲の組織に漏れ出して強い炎症を引き起こし、まれに「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という深刻な皮下組織の感染症へ進展する可能性も否定できません。
なお、気になるからといってご自身で潰したり、針を刺して穴を開けたりする行為は、感染を急激に悪化させたり、深い傷跡(瘢痕)を残したりする原因になります。そのため、セルフケアでの無理な排膿は控え、違和感を覚えた段階で早めに皮膚科を受診することが、結果として治療負担を最小限に抑える近道となります。
粉瘤の手術が「保険適用」になる理由
公的健康保険は「疾患の治療」に対して給付される制度です。粉瘤は「皮膚の良性腫瘍」という疾患に該当するため、保険適用となります。
「顔の粉瘤だから自費になる」というのは誤解であり、医学的な治療目的であればお顔の治療も保険診療の対象です。
健康保険は「疾患の治療」を給付する制度
日本の公的医療保険制度は、健康保険法などに基づき、加入者が疾病や負傷をした場合に「療養の給付」を行う仕組みです。この給付には、診察、薬剤・治療材料の支給、処置、手術、そして術後の管理などがすべて含まれています。
つまり、医学的な観点から治療が必要であると医師が判断した疾患であれば、その治療行為は原則として保険給付の対象になります。
。粉瘤は単なる一時的な肌荒れではなく、感染・巨大化・破裂といったリスクを内包する皮膚の良性腫瘍(疾患)であるため、診察から摘出手術にいたる一連のプロセスを保険診療として行うことができます。
美容目的との線引き
健康保険の対象外となるのは、規程にある「疾病・負傷の治療と認められないもの」です。代表例としては、純粋な審美性の向上を目的とした美容整形や、疾患の伴わないシワ取り、医療脱毛などが挙げられます。
粉瘤の治療において、以下のようなケースは「医学的治療目的」に該当するため、原則として保険が適用されます。
- 痛みや赤み、違和感を伴っている
- サイズが徐々に大きくなっている
- 衣服に擦れるなど日常生活で機能的な支障がある
- 過去に何度も感染・化膿を繰り返している
- 悪性腫瘍など他の疾患との鑑別が必要である
一方で、体に全く害のないごく小さなもので、ご本人が「見た目だけが気になる」として切除を希望され、医師も医学的必要性が乏しいと判断した場合は、自費診療の扱いになる可能性があります。
判断は医師が医学的に行う
保険適用か自費診療かのラインは、特定の部位やサイズによって画一的に自動判別されるものではありません。医師が実際の状態を診察し、医学的な知見に基づいて個別に判断します。
「顔のしこりだから自費になる」「小さいから保険が使えない」といった単純なルールではありません。特にお顔の粉瘤について「美容目的とみなされて自費になるのではないか」と思い込み、受診をためらってしまう方が多くいらっしゃいますが、医学的な治療目的であればお顔であっても保険適用が原則です。気になる症状がある場合は、まずは皮膚科を受診し、医師にご相談ください。
診療報酬点数から見る粉瘤手術の費用構造

保険診療の費用は「診療報酬点数表」に基づき1点=10円で計算されます。粉瘤摘出術はK005「皮膚・皮下腫瘍摘出術」で算定され、部位(露出部/非露出部)と長径により点数が決まる仕組みです。
診療報酬点数とは
診療報酬点数は、保険診療で実施した医療行為を金額換算するためのルールで、厚生労働省の診療報酬点数は、日本全国どの医療機関の保険診療でも共通して適用される、医療行為の価格表のようなものです。厚生労働省の告示によって定められており、1点=10円で計算します。
窓口での支払額は、この総医療費に患者さんの自己負担割合(現役世代であれば3割、高齢者は1〜3割)、高校生までの小児はお住いの地域によって定められている医療補助制度次第で負担が変わります【例:板橋区の子ども医療費助成について】を掛けた金額です。例えば、手術の点数が1,000点であれば医療費は10,000円となり、3割負担の方の窓口支払額は3,000円になります(※実際には初診料や処置料、麻酔料、お薬代などが別途加算されます)。診療報酬は2年ごとに改定されるため、本記事で紹介する点数は2026年5月時点の参考値としてご覧ください。
粉瘤摘出術で算定される主な項目
粉瘤の摘出術で算定される主な点数項目は以下です。
- K005 皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部以外):粉瘤摘出術の基本となる手術項目。長径による区分があり、長径が大きくなるほど点数も上がります。
- K006 皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部):顔・頸部・肘より下・膝より下など露出部の粉瘤摘出術で算定されます(区分・対応コードは点数表の最新版で要確認)。
- K007 皮膚悪性腫瘍切除術:悪性が強く疑われ広範切除を行った場合に算定される項目(粉瘤の場合は通常該当しません)。
これらに加え、初診料(または再診料)、創傷処置料、局所麻酔薬を用いた麻酔料、薬剤料、処方箋料、術後の病理組織検査を行う場合は、病理組織標本作製料(N000)・病理診断料が加算されます。
計算の具体例
一例として、「衣服に隠れる部位(非露出部)にある2cm未満の粉瘤」を摘出する場合の費用を試算してみましょう。
- 手術料(K005またはK006): 1,280点(12,800円)
- 初診料: 291点(2,910円)
- 局所麻酔・お薬代・処方箋料など: 数百円程度
- 医療費総額: 約16,000円〜17,000円
- 【3割負担の場合の窓口支払額】 約5,000円〜5,500円
※上記に加え、摘出した組織が良性かどうかを確認する「病理組織検査」を行う場合は、3割負担でさらに2,000円〜3,000円程度が加算されます。 ※粉瘤の長径が大きい場合や、顔などの露出部にある場合は手術料の点数が上がるため、3割負担でも窓口負担が1万円台から2万円台に達することがあります。実際の費用は患者さんの状態や医療機関の体制によって異なりますので、受診先の窓口でご確認ください。
術式別の特徴と保険適用(くり抜き法/紡錘形切除)
粉瘤の手術には主に「くり抜き法」と「紡錘形(ぼうすいけい)切除」の2種類があり、どちらの術式を選んでも健康保険が適用されます。術式の違いによって保険か自費かが分かれるわけではなく、粉瘤の大きさ、部位、炎症の有無などを総合的に考慮して医師が最適な方法を選択します。
くり抜き法(パンチ生検+摘出)
くり抜き法(くりぬき法、トレパン法とも呼ばれます)は、円筒形のパンチ(トレパン)を使って粉瘤の中央部に小さな穴を開け、そこから内容物と袋(嚢腫壁)を摘出する術式です。傷が小さく、縫合が不要、もしくは1〜2針の最小限の縫合で済むことが多いのが特徴です。一方、粉瘤が大きい場合や炎症で組織が癒着している場合は袋の完全摘出が難しく、再発の可能性が指摘されることもあります。くり抜き法はK005(または該当区分)で保険適用となります。
紡錘形切除(楕円形切除+縫合)
紡錘形切除(楕円形切除)は、粉瘤の上の皮膚を細長い紡錘形(ラグビーボール状)に切除し、皮下の袋(嚢腫壁)と内容物をひとかたまりとして摘出して縫合する伝統的な術式です。袋を完全に取り除きやすく、再発抑制という観点で評価されている方法です。一方、線状の傷跡が残り、抜糸(術後1〜2週間)が必要になります。紡錘形切除もK005(または該当区分)で保険適用となります。
術式選択は医師の医学的判断
くり抜き法と紡錘形切除のどちらが「優れている」と単純に言えるものではなく、粉瘤の大きさ、部位、炎症の有無、皮膚の弛み、患者さんの瘢痕(傷跡)に対する許容度などを総合的に判断して選択されます。重要なのは、いずれの術式でも保険適用は変わらないという点です。重要なのは、どちらの方法であっても保険診療の枠組みの中で行えるという点です。「新しい手法だから自費になる」といった心配はありません。気になる場合は、診察時に医師に「保険診療で実施できますか」と確認すれば、明確な回答が得られます。
部位・大きさによる費用の違い
同じ粉瘤でも、露出部か非露出部か、長径が何cmかによって診療報酬点数が異なり、結果として窓口負担額が変わります。粉瘤は時間とともに大きくなる傾向があるため、早期受診が結果的に費用負担を抑える選択にもなり得ます。
K005の区分
K005「皮膚・皮下腫瘍摘出術」(および露出部の対応区分)は、部位と長径によって細かく区分されています。一般的な区分は以下の通りです(具体的な点数は2026年5月時点の点数表を参照のうえ、改定があり得る前提でご確認ください)。
- 非露出部:長径2cm未満/長径2cm以上4cm未満/長径4cm以上6cm未満/長径6cm以上の4区分前後
- 露出部:長径2cm未満/長径2cm以上4cm未満/長径4cm以上 等の区分
長径が大きくなるほど、また露出部であるほど点数は高くなる傾向があり、切除範囲の広がりや縫合の難度・整容性への配慮を反映したものと考えられます。
部位別の概算(3割負担、2026年5月時点)
以下はあくまで概算で、実際の費用は初診料・再診料・処置料・麻酔料・処方箋料・病理検査料の有無や、医療機関の体制で異なります。
- 非露出部・長径2cm未満:おおむね3,000〜6,000円程度
- 非露出部・長径2〜4cm未満:おおむね5,000〜10,000円程度
- 非露出部・長径4cm以上:おおむね10,000〜15,000円台
- 露出部・長径2cm未満:おおむね5,000〜10,000円程度
- 露出部・長径2cm以上:おおむね10,000〜20,000円台
これらは手術料を中心とした参考値で、病理組織検査はさらに数千円が加算されます。正確な金額は受診時に必ず医療機関でご確認ください。
大きさで点数が変わる理由
長径によって点数が変わるのは、切除範囲が広がるほど手術時間・縫合の手数・出血リスク・術後管理の負担が増えるためです。また、大きな粉瘤は周囲組織との癒着が強くなり、手術操作の難度自体が上がる傾向があります。結果として、粉瘤が小さなうちに受診・治療する方が、費用面でも、瘢痕の観点でも、術後の通院負担の観点でも有利になりやすいと言えます。気になる粉瘤がある場合は、症状の悪化前に一度皮膚科で相談されることをおすすめします。
感染した粉瘤(炎症性粉瘤)の保険治療

感染して腫れ上がった粉瘤(炎症性粉瘤)は、まず切開して膿を出す処置を行い、炎症が落ち着いた後日、改めて根治手術を行う「二段階治療」が一般的です。いずれの段階も保険診療が適用されますが、腫れているからといってご自身で潰す行為は、感染悪化や傷跡の重症化につながるため控えてください。
感染粉瘤とは
通常の粉瘤は痛みのない皮下のしこりですが、細菌感染を起こすと急激に赤く腫れて熱感を持ち、強い痛みを伴うようになります。これを炎症性粉瘤(感染性アテローム、感染性表皮嚢腫)と呼びます。感染のきっかけは明確でないケースが多いものの、服の擦れなどの外部刺激、袋のミニ破裂、毛穴の細菌感染などが要因として挙げられます。放置すると周囲へ感染が広がり、まれに皮下組織全体の重い感染症である「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」に進展することもあるため、早期の医療介入が必要です。発熱、赤みの急速な拡大、激しい痛みなどがある場合は、速やかに皮膚科や外科を受診してください。
急性期の処置(切開排膿)
感染性粉瘤の急性期は、まず局所麻酔下で皮膚を小切開し、中に溜まった膿を排出する「切開排膿」が行われます。これにより内部圧が下がり、痛みは大幅に軽減することが多いとされます。切開排膿は保険診療として算定可能で、処置料、局所麻酔薬・薬剤料、必要に応じて抗菌薬の処方料などが加算されます。3割負担での費用はおおむね数千円程度に収まるケースが多いですが、処置の範囲や薬剤により変動します。当院では原則当日対応可能です。ただし、小児の場合は、手術中に動かないようにできない、局所麻酔の恐怖で安静にできないなどの理由でクリニックでの実施が困難なケースがあります。
炎症が落ち着いてからの根治手術
切開排膿は、あくまで「溜まった膿を出す」という応急処置に過ぎません。粉瘤の根本原因である「皮下の袋(嚢腫壁)」はそのまま残っている状態です。袋を残したままにしておくと、いずれまた角質や皮脂が溜まり、再発や再感染を繰り返してしまいます。そのため、炎症が完全に鎮静化した数週間〜数カ月後に、改めて袋ごと摘出する根治手術(K005 皮膚・皮下腫瘍摘出術 等)を行うのが一般的な流れです。二段階治療のため、切開排膿の費用と根治手術の費用がそれぞれ発生する点に留意してください。自己穿刺・自己排膿は、感染拡大、瘢痕形成、袋の破裂・組織への漏出など、医学的に重大なリスクを伴うため、絶対に行わず皮膚科で適切な処置を受けてください。
自費診療との違い・判断軸
粉瘤の手術は、医学的な治療目的であれば原則として健康保険で対応できます。一方で自費診療は、医学的な必要性が認められない純粋な美容目的や、保険適用外の特殊な機器・手技を患者さんが希望する場合に選択肢となります。
保険診療のメリット
粉瘤治療を保険診療で受けることには、以下のような多くのメリットがあります。
- 経済的負担の軽減:自己負担割合が3割(年齢などの条件によっては1〜2割)に抑えられます。
- 費用の透明性: 国が定める診療報酬点数表に基づき、全国一律の明確な算定ルールで計算されます。
- 確立された標準治療: 保険診療で行われる摘出手術は、長年の臨床実績に裏付けられた安全性の高い標準治療です。
- 他疾患との同時診療: 同日に他の皮膚トラブルの診察を受ける場合も、一連の保険診療の中でスムーズに対応できます。
- 高額療養費制度: 万が一、同月内の自己負担が一定額を超えた場合は、負担を軽減する公的制度が利用できます。
自費診療を選ぶ場面
一方で、あえて自費診療(自由診療)を選択、あるいは自費の扱いになるのは以下のようなケースです。
- 純粋な美容目的: 医師が診察した結果、健康上のリスクや日常生活への支障が一切なく、純粋に「見た目だけを綺麗にしたい」というご本人の審美目的の要望である場合。
- 保険外の機器・手技の希望: 保険診療では認められていない特殊なレーザー機器の仕様や、傷跡をさらに極小化するための特殊な形成外科的手技を希望する場合。
- 医療機関の特別プラン: 待ち時間のない完全予約優先枠など、医療機関が独自に提供している保険外のサービスを付加する場合。
自費診療の場合、治療費は各医療機関が独自に設定するため、事前の見積もりや同意書の確認が不可欠です。
どう判断するか
判断の現実的な流れは以下のようになります。まず皮膚科を受診し、粉瘤の状態(部位・大きさ・炎症の有無・悪性所見の有無)を医師に診察してもらいます。そのうえで、医学的に保険診療として実施可能か、どの術式が適しているか、想定される費用・通院回数・術後経過について説明を受けます。説明を聞いたうえで「保険診療で進める」か「自費の選択肢も検討する」かを判断します。多くのケースでは保険診療で対応可能ですが、整容を重視した特別な対応を望む場合などは自費の選択肢が提示されることもあります。一律に「保険診療が良い」「自費が良い」と決めつけず、ご自身の希望と医学的妥当性のバランスで決めることが大切です。
術後の通院費用と病理組織検査
粉瘤摘出術の総費用は「手術当日の費用」だけでなく、術後通院・病理組織検査・薬剤費を合算して考える必要があります。場合によっては高額療養費制度の対象になり得るため、自己負担が高額になった月は加入している保険者へ確認するのがおすすめです。
術後通院の費用
皮膚を縫合する術式(紡錘形切除など)を選んだ場合、術後1〜2週間ほど経過したタイミングで「抜糸」のための通院が必要です。くり抜き法などで縫合しなかった場合でも、傷口の治り具合を確認するために1〜2回程度の通院が推奨されるケースが多く見られます。
術後通院にかかる窓口負担は、再診料や創傷処置料、必要に応じたお薬代などが中心となり、3割負担であれば1回あたり数百円〜1,500円程度で収まることが一般的です。ただし、万が一術後に傷口が赤く腫れたり、細菌感染の兆候が見られたりした場合は、追加の処置やお薬の処方が必要となり、その分の費用が加算されます。
病理組織検査(N000など)の費用
手術で摘出した粉瘤の組織は、悪性腫瘍が紛れていないかを確定診断するため、原則として「病理組織検査」へ提出することが望ましいです。これは、顕微鏡を使って組織の細胞を詳細に観察し、見た目では区別がつきにくい「悪性腫瘍(皮膚がんなど)」の成分が紛れていないかを確定診断するための重要なステップです。特に、長年放置されて巨大化したものや、急激に大きくなったもの、形が歪なしこりなどの場合は、安全のために検査を行うケースが多く見られます。
この病理検査を行う場合、診療報酬の「病理組織標本作製料(N000)」や「病理診断料」などが算定され、3割負担の方であれば窓口での支払いが約2,000円〜3,000円程度加算されます。検査結果が出るまでには通常1〜2週間ほどかかります。
高額療養費制度の活用
1ヶ月(治療を開始した月の1日から末日まで)の間に医療機関の窓口で支払った自己負担額が、所得等に応じて定められた上限額を超えた場合、超過分が後から払い戻される「高額療養費制度」があります。
一般的な粉瘤の摘出手術のみでこの上限を超えるケースは多くありませんが、同じ月に他の病気の治療が重なった場合や、非常に大きな粉瘤で大掛かりな手術・入院が必要になった場合などは対象となる可能性があります。自己負担の上限額は年齢や所得区分によって異なりますので、詳しくはお使いの健康保険証に記載されている保険者(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国保窓口など)へご確認ください。
よくある質問(FAQ)
受診前によくある疑問を整理しました。最終的な判断は医師の診察に基づいて行われるため、不明点は受診時に遠慮なく質問してください。
Q1. 顔の粉瘤は美容目的扱いで自費になりますか?
いいえ、顔の粉瘤であっても、炎症・痛み・サイズの増大・日常生活での引っかかりなどがあり、医学的に治療が必要と医師が判断すれば原則として保険適用となります。「顔だから一律で自費」というルールはありませんので、安心して皮膚科にご相談ください。
Q2. 同日に複数の粉瘤を切除しても保険適用ですか?
はい、同日に複数の粉瘤を手術する場合も保険が適用されます。
ただし、同じエリアの皮膚を一度に切開して取る場合と、全く別の部位(例:顔と背中など)を別々に切開する場合とで、診療報酬の算定ルールが異なります。複数箇所を同時に手術する場合、2つ目以降の手術費用が「所定点数の50%」として計算される規定などがあるため、具体的な費用は事前に医療機関で見積もりを確認することをおすすめします。
Q3. 病理検査は必須ですか?
はい、当院では原則として摘出した全ての組織について病理組織検査を実施します。粉瘤と非常によく似た形状の悪性腫瘍(皮膚がんなど)が隠れているケースが稀に存在するため、安全を期して実施しています。
特に、長期間放置して大きくなったものや急激に変形したしこりは、医学的にも検査の重要性が高くなります。
Q4. 子どもの粉瘤も保険適用ですか?
はい、お子様が健康保険に加入していれば、年齢を問わず保険診療の対象となります。また、就学前のお子様は自己負担割合が2割になるほか、各自治体が実施している「子ども医療費助成制度」などが適用されれば、実際の窓口負担がさらに軽減、あるいは実質無料になるケースもあります。
詳しくはお住まいの自治体の窓口へご確認ください。
Q5. 紹介状なしで大学病院に行くと選定療養費がかかりますか?
はい、紹介状(診療情報提供書)を持たずに大病院(特定機能病院や200床以上の地域医療支援病院など)を初診で受診すると、通常の手術費用や診察料とは別に、「選定療養費」として数千円〜1万円程度の特別料金が自己負担として請求されます。
まずは地域の皮膚科クリニックを受診し、必要に応じて紹介状を書いてもらうのが、費用面でも手続き面でもスムーズな流れです。
Q6. 局所麻酔の費用は別料金ですか?
手術の基本料金(手術料)の中に、麻酔の手技料が含まれている場合と、特定の条件下で別途算定される場合があります。
また、使用した麻酔薬そのものの費用(薬剤料)は別途数十円〜数百円程度加算されるのが一般的です。これらはすべて保険適用の範囲内であり、当日の会計総額に含まれます。
Q7. 粉瘤が再発した場合の再手術も保険適用ですか?
はい、再発してしまった粉瘤の再手術であっても、疾患の治療を目的とするものであれば原則として保険診療で治療を受けられます。
粉瘤はその構造上、どれほど丁寧に手術を行っても再発のリスクを完全にゼロにできる術式はありません。再発が見られた場合は、無理に触らず再度皮膚科を受診してください。
参考文献
- 厚生労働省 診療報酬 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
- 厚生労働省 医療費の自己負担 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-37.html
- 厚生労働省 高額療養費制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 日本皮膚科学会https://www.dermatol.or.jp/dermatol/
- 日本形成外科学会https://jsprs.or.jp/
- 日本形成外科学会 皮膚腫瘍 概要https://jsprs.or.jp/general/disease/shuyo/
- Minds ガイドラインライブラリhttps://minds.jcqhc.or.jp/
- しろぼんねっと 診療報酬点数表 https://shirobon.net/medicalfee/latest/
- しろぼんねっと K005 皮膚・皮下腫瘍摘出術 https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r08_ika/r08i_ch2/r08i2_pa10/r08i2a_sec1/r08i2a1_sub1/r08i2a11_cls1/r08i2a111_K005.html
- J-STAGE 学術論文検索 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
最終更新日
2026年5月28日
免責事項
本記事は2026年5月時点で確認できる公的機関・学会・診療報酬点数表に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、特定の治療法・術式の効果を保証するものではありません。
診療報酬点数は2年ごとに改定されるほか、医療機関の体制や患者さんの状態によって算定内容・費用は異なります。粉瘤の診断・治療方針・費用の最終的な判断は、必ず医療機関の診察・説明に基づいて行ってください。
気になる症状がある方、急速な増大・赤み・痛みを認める方は、できるだけ早く皮膚科を受診されることをおすすめします。
記事制作監修
成増駅前かわい皮膚科
院長 河合 徹














