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やけど(熱傷)

 やけど(熱傷)は、熱による皮膚や粘膜の外傷で、日常生活で最もよく見られる疾患の1つです。

 多くは皮膚表面の損傷ですが、場合によって深部組織まで傷つけ、瘢痕やケロイドなどを起こすことがあるため、治療には注意が必要です。

やけど(熱傷)の原因

 やけど(熱傷)は、熱湯や水蒸気など高温の物質が皮膚に触れることで起こります。

 また「低温やけど」と呼ばれる、44~60度ほどの比較的低い温度でも、長時間皮膚に接触していることで起こるやけど(熱傷)もあります。「低温やけど」は、湯たんぽなど気づかずに長時間やけどの原因に触れ続けていることで、思った以上にやけどが深くなってしまうことが多々あります。

 他にも最近では、携帯や充電器などの家庭電源(電流)による電撃傷なども増えてきています。

やけど(熱傷)の症状

 皮膚は、表皮・真皮・皮下組織(脂肪)で構成されていて、やけど(熱傷)はどの皮膚組織まで傷がおよんでいるかで症状を分類します。

やけど(熱傷)の症状

I度熱傷

 皮膚表面、表皮のみのやけど(熱傷)です。皮膚が赤くなり、軽い腫れ、ヒリヒリ感が生じます。

 患部をしっかり冷やし、症状に合わせて軟膏を塗ることで、早ければ1週間前後で治ることが多いです。一時的に色素沈着を起こすことがあるので、日焼けやこすったりといった刺激を与えないようにします。

浅達性II度熱傷

 表皮全層と真皮の浅い層までにおよぶやけど(熱傷)です。水疱(水ぶくれ)ができ、痛みが生じます。

 ステロイド外用薬、症状によって創傷被覆材を貼った治療を行うことで、2週間以内に治ることがほとんどです。傷跡、色素沈着を起こしやすいため、適切かつ早期治療が大切となります。

深達性II度熱傷

 真皮の深い層までおよぶやけど(熱傷)です。白い水疱(水ぶくれ)ができ、治るまで3~4週間と時間がかかります。

 神経も傷つけてしまうことがあり、「浅達性II度熱傷」より痛みが少ないことが特徴の一つですが、瘢痕や瘢痕拘縮(ひきつれ)はさらに起こりやすく、症状によっては外科的治療が必要になります。また、細菌感染リスクが高いため、早めに受診して、適切な処置を受けるようにしましょう。

III度熱傷

 皮下組織(脂肪)またはその更に下の組織まで及ぶやけど(熱傷)で、皮膚が白色または褐色から黒色になります。痛みが少ない、または痛みがないのが特徴です。

 原則、外科的治療が必要となります。当院では、症状を見極めた上、必要に応じて適切な病院を紹介しています。


参照:『皮膚科Q&A:やけど』公益社団法人日本皮膚科学会

やけど(熱傷)の応急処置と治療

 やけど(熱傷)をした場合、すぐに冷えた水道水で20分以上冷やすことをおすすめ致します。

やけど(熱傷)の応急処置と治療

 これまでは国や学会によって冷却する方法や時間がバラバラでしたが、2019年に約2500人の小児熱傷患者を検証した論文で、熱傷が起こってから、受傷3時間以内に冷えた水道水を20分以上患部に当てた熱傷患者の方が、植皮などの外科的処置や入院の頻度が低かった1)ことが発表され、具体的な応急処置の目安として活用されております。

 応急処置後は、できるだけ熱傷の程度を軽くする目的で早期に皮膚科を受診することもおすすめ致します。なお、受診までの間、保冷剤などを受傷部位に当てることもひとつの方法ですが、冷やし過ぎても傷を悪化させることがあるので、ガーゼやタオルでくるむなどの方法で、更なる皮膚の損傷が起こらないようご注意ください。

 やけど(熱傷)は軽いものでも瘢痕が残ることがあるので、自己判断でケアせず、医師が症状を診た上で、軽症であれば軟膏による治療を中心に行います。外科的治療が必要な際は説明の上行い、範囲が広く傷が深い方については適切な病院を紹介しますのでご安心ください。

子供のやけど(熱傷)は予防が大事

 子供の皮膚は大人に比べて薄く、やけどが重症になりやすいため、予防策には細心の注意が必要です。子供たちは好奇心が強く、まだ危険を認識できない年齢のため、大人が環境を安全に保つことが重要です。以下のような具体的な予防策が有効であると提唱されております2)

(1)熱湯や汁物などの高温の液体を小児の手の届く範囲に放置しない

子供のやけど(熱傷):熱湯や汁物などの高温の液体を小児の手の届く範囲に放置しない

 小さな子供は周囲のものに自然と手を伸ばす傾向があるため、高温の液体や物体を手の届かない場所に保管することが重要です。例えば、テーブルの中央よりも奥に置く、カウンターの上など安全な場所に保管するなどの方法が推奨されます。

(2)テーブルクロスを使用しない

子供のやけど(熱傷):テーブルクロスを使用しない

 歩き始めの子供がテーブルクロスを引っ張ると、上に置かれた熱い物が引っ繰られて落下する危険があります。テーブルクロスを使わない、または止むを得ず使用する場合は短いものを選ぶことでリスクを減らすことが期待できます。

(3)炊飯器やポットの蒸気の吹き出し口に注意

子供のやけど(熱傷):炊飯器やポットの蒸気の吹き出し口に注意

 蒸気の吹き出し口に手を近づけることでやけどを負うリスクがあり、これらの製品は子供の手の届かない場所に置く、または子供が近づかないように注意を払うことが重要です。

(4)温風ヒーターの吹き出し口に注意

子供のやけど(熱傷):温風ヒーターの吹き出し口に注意

 温風ヒーターの熱された本体や放出される熱い空気は、子供にとってやけどの原因に可能性があります。ヒーターの周りに安全なスペースを確保し、子供が近づけないようにすることが大切です。

(5)アイロンやストーブなどの熱源に触れないよう配慮する

子供のやけど(熱傷):アイロンやストーブなどの熱源に触れないよう配慮する

 アイロンやストーブなどの熱源は、小児にとって大きなやけどのリスクを持ちます。使用しない時は、子供の手の届かない場所に置くか、安全カバーを使用するなどの予防策が有効です。使用時には大人の目の届く範囲に置き、子供が接触しないように注意することが重要です。

(6)電気コードや電源のソケットに注意する

子供のやけど(熱傷):電気コードや電源のソケットに注意する

 幼児はしばしば電気コードやソケットを口に含むことがあり、これが電撃傷の原因になることがあります。電気コードはまとめて整理することで子供の手が届きづらい状態にしたり、ソケットカバーを使用すると良いでしょう。コンセントに触れてしまわないように、コンセントキャップも安全対策に有効です。


 これらの予防策を実施することで、小児におけるやけどのリスクを減らすことができると考えられます。特に幼児や歩き始めたばかりの子供を持つ家庭では、これらの点に特に注意を払うことが重要であり、家庭内の安全対策を講じることで、不幸な事故を未然に防ぐことが期待できます。

参考文献:
1) Ann Emerg Med. 2020 Jan;75(1):75-85. doi: 10.1016/j.annemergmed.2019.06.028. Epub 2019 Aug 29.
2) 一般社団法人日本形成外科学会HP「やけど(熱傷)

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