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水痘(すいとう:水ぼうそう)

 水痘(すいとう)は、いわゆる「水ぼうそう」のことで、水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルスによって起こる感染症です。「小児のウイルス感染症」のひとつとであり、9歳以下での発症が90%以上を占めると言われています。

 水ぶくれのような発疹が全身に現れ、かゆみ、発熱を伴います。通常、1週間程で治りますが、水痘(水ぼうそう)は感染力がとても強く、飛沫感染、空気感染などであっという間に感染が広がるため、注意が必要です。

水痘(すいとう:水ぼうそう)の原因

 ヘルペスウイルスに属する水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症します。主に小児の感染症で、9歳以下での発症が90%以上と言われています。

 水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力がとても強く、空気中に漂うウイルスを吸い込むことで感染する空気感染、咳・くしゃみなどによる飛沫感染、接触感染によって広がります。そのため、家庭内での接触感染は90%とも言われており、保育園・幼稚園で流行することも多いです。

 ウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間を「潜伏期間」と言いますが、水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、通常2週間程で発熱・水ぼうそうなどの症状が現れます。

水痘(水ぼうそう)の原因:水痘・帯状疱疹ウイルス

水痘(すいとう:水ぼうそう)の症状

 初期症状として、発熱と全身に赤い発疹が現れます。

 38度前後の発熱が続く中、胸、腹部、顔、手足と、赤くて小さなぶつぶつ(発疹)が全身に現れます。口の中など、粘膜に発疹ができることもあります。

 かゆみを伴うのが特徴で、1週間ほどかけて、赤い発疹から水ぶくれになり、茶色いかさぶた(痂皮)へと変化していきます。かさぶたになるとウイルスは消失するため、感染源にはなりません。

 通常は治療を行わなくても自然と治りますが、発熱が長く続くと、熱性痙攣、肺炎、気管支炎などの合併症を引き起こし、重症化することがあります。

水痘(水ぼうそう)の症状:小児の水痘の症状
小児の水痘(水ぼうそう)の症状
水痘(すいとう:水ぼうそう)の症状と経過 水痘(すいとう:水ぼうそう)の症状と経過

症例出典:『皮膚科Q&A:子供のウィルス感染症』公益社団法人日本皮膚科学会

水痘(水ぼうそう)よる出席停止期間

 水痘(水ぼうそう)は、インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)と同じ「第二種感染症」に分類されています。

 「第二種感染症」は主に飛沫感染し、児童生徒・学生の罹患が多く、幼稚園や学校で感染を広げる可能性が高い感染症です。そのため、学校保健法により出席停止期間が設けられています。疾患によって出席停止期間の基準が異なり、水痘(水ぼうそう)の場合、『全ての発疹が痂皮化するまで』幼稚園や学校へは行けません。

 症状が完治して登園・登校する際、治癒証明書等の提出が必要になることがありますので、保育園・学校に確認いただき、診察時にお知らせください。

第二種感染症の出席停止期間の基準

疾患名席停止期間
水痘
(水ぼうそう)
全ての発疹が痂皮化するまで
インフルエンザ 幼稚園:発症後5日経過し、かつ解熱後3日間
小中高校・大学:発症後5日経過し、かつ解熱後2日間
百日咳 特有のせきが消える、または5日間の抗菌性物質製剤による治療終了まで
麻疹 解熱後3日を経過するまで
流行性耳下腺炎 耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで
風疹 発疹が消失するまで
咽頭結膜熱 腫瘍症状消消退後2日経過まで
結核 伝染の恐れがないと、医師が認めるまで

水痘(すいとう:水ぼうそう)の治療

 通常、治療を行わなくても、7~10日で自然治癒します。

 高熱がある場合は、解熱薬を使用することもありますが、小児は副作用がでることもあるので、自己判断で市販薬などを使わず、医師の判断を仰ぐようにしましょう。また、重症化リスクの可能性がある場合は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を使用することもあります。

 水痘(水ぼうそう)はかゆみを伴うため、皮膚をかきむしってしまい、二次感染のリスクが高まったり、とびひ(伝染性膿痂疹)などの合併症を起こすこともあります。予防のためにも、患部は清潔にた保ち、爪を短く切って皮膚を傷つけないようにしましょう。患部に抗菌外用薬など塗る際は、直接触らず、綿棒など使って塗布するなどの工夫も必要です。

水痘(すいとう:水ぼうそう)はワクチン接種で予防できる

 水痘(水ぼうそう)は、水痘ワクチンによる予防接種が効果的です。

 水痘ワクチンの定期予防接種は、2014年10月1日より開始されており、乾燥弱毒生水痘ワクチンが用いられています。1回の接種で重症の水痘(水ぼうそう)をほぼ100%予防でき、2回の接種で軽症のものも含めて発症を抑えられるとされています。

 水痘ワクチンによって体内に抗体ができると、効果は恒久的に続くと言われています。後述する、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしん・たいじょうほうしんごしんけいつう)予防にもつながります。


水痘ワクチン接種スケジュール(定期A:合計2回)

1回目生後12ヶ月から15ヶ月に達するまで(標準的な接種期間)
2回目1回目接種後、3ヶ月以上(標準的には6~12ヶ月)の間隔をおく

 水痘(水ぼうそう)は、通常小児期に感染して、終生免疫を得ることが多い疾患です。

 しかし、大人になってから初めて感染することもあります。大人の場合、小児と比べて高熱や強い高い倦怠感、かゆみを伴うことが多く、髄膜炎や脳炎などの重症化リスクが高くなります。妊娠初期の方が水痘(水ぼうそう)に感染すると、生まれてくる子どもが先天性水痘症候群(Congenital Varicella Syndrome (CVS))という重症な病気にかかることがあり注意が必要です。

 成人水痘(水ぼうそう)の場合、高熱のほか、多くの水疱を生じるなど皮膚粘膜症状が強いのが特徴です。

 また、自然軽快する小児とは異なり、重症化しやすいとされています。特に肺炎のほか、多臓器不全、凝固障害など内臓病変を合併し、重症水痘へ進行しやすいです。稀ではありますが、髄膜炎、小脳失調症、血小板減少などの合併症を引き起こすことも報告されています。

水痘(水ぼうそう)の症状:成人の水痘多発症状
成人の水痘(水ぼうそう)多発症状

症例出典:『皮膚科Q&A:子供のウィルス感染症』公益社団法人日本皮膚科学会

 妊娠中に初めて水痘(水ぼうそう)に感染した場合、週数によって胎児に影響を及ぼすことがあります。

 妊娠早期に感染した場合、流産になるケースが多いです。中期以降に感染した場合は、CVS(低出生体重児、四肢肢低形成、小頭症、皮膚症状、眼症状など)のリスクが高まります。

 妊娠後期の場合は、子宮の増大による呼吸機能の低下の影響もあり、水痘肺炎が重症化するとされています。

 こうしたことから、妊娠中の方で水痘(水ぼうそう)に罹患したら、必ずかかりつけの産婦人科医師に相談するようにしてください。

妊婦の方の水痘(水ぼうそう)

加齢などによる水痘(水ぼうそう)の再感染

 水痘(水ぼうそう)は、通常小児期に感染して、終生免疫を得ると考えられてきました。しかし、水痘(水ぼうそう)は、一度罹ると、治った後もウイルスは神経に潜んでいます。

 そのため、加齢、疲労やストレスなどによって免疫力が低下すると、ウイルスが目覚め、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛として再発症します。

免疫不全者の水痘(水ぼうそう)の再感染

 前述したように、治癒後も水痘・帯状疱疹ウイルスは神経に潜伏し、いわゆる「冬眠」状態にあります。

 加齢などのほか、白血病や抗癌剤投与、免疫抑制剤投与・臓器移植後などで免疫抑制状態にあると、ウイルスが「冬眠」から目覚め症状が再発するだけでなく、重症化リスクが高くなります。

帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛の予防

 上記ように成人してから、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛としての水痘(水ぼうそう)再発を防ぐため、当院では、帯状疱疹ワクチンの予防接種を行っております。
 
 帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛は、50歳以上の高齢者に多発する症状ですが、近年では、若年層の発症が増えており、誰にでも起こり得る皮膚疾患のひとつです。帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛もワクチンで軽減・重症化予防ができるようになっていますので、以下の項目を参照していただき、気になる症状などあれば診察にてご相談ください。

帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛(ワクチン・予防接種)

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