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多汗症(原発性手掌多汗症)

 多汗症は、手、足、脇など局所的に多量の発汗がみられる疾患です。

 多汗症の中でも、手のひらに大量の汗をかく症状を原発性手掌多汗症(げんぱつせいしゅしょうたかんしょう)と言います。

 緊張している時、人は手のひらに汗をかきやすくなりますが、手掌多汗症の方は、緊張していない日常時でも手のひらに大量の汗をかきます。そのため、学校や職場で、書類を塗らすほど汗をかいてしまい、汚したりして困ると悩んでいる方が多くいます。

 これまで体質の問題とされることも多かった手掌多汗症ですが、2023年6月、手掌多汗症専用の塗り薬が登場し、症状の緩和が期待されています。

多汗症の症状と原因

 人は、暑い時や運動した時など、体温調節のために汗をかきます。しかし、体温調節がいらない時でも大量の汗をかいてしまう症状を多汗症と言います。

 多汗症は、ワキや額、手のひら、足の裏で発症しやすく、原因の分からない「原発性」のもの、内科的疾患・外傷・腫瘍などによる「続発性」ものと、その原因はさまざまです。

多汗症の症状と原因

続発性多汗症の原因

全身性薬剤性、薬物乱用、循環器疾患、呼吸不全、感染症、悪性腫瘍、内分泌代謝疾患(甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、末端肥大症、カルチノイド腫瘍)、神経学的疾患(パーキンソン病)
局所性脳梗塞、末梢神経障害、神経障害による無汗から起こる他部位での代償性発汗 (脳梗塞、脊椎損傷、Ross症候群)、Frey症候群、エクリン母斑、不安障害、片側性局所性多汗症(例:神経障害、腫瘍)

 人の身体には、「アポクリン腺」と「エクリン腺」と呼ばれる2種類の汗腺が存在し、多汗症の原因となるのは「エクリン腺」から分泌される汗です。

 「エクリン腺」から分泌された汗は、水分と塩分で構成され、無色でニオイもありません。ところが、皮膚表面に付着している皮脂や汚れと混ざり、皮膚常在菌によって分解されるとニオイが発生します。

 また、衣類の汗ジミ・黄ばみなどの原因なったり、原発性手掌多汗症の方は、大事な書類を汗で濡らして汚してしまったりなど、日常生活に影響がでることがあります。

多汗症の原因は、エクリン腺から分泌される汗

多汗症の種類

 多汗症は、汗のでる部位や原因によって、いくつかに分類されます。

原発性局所多汗症(げんぱつせいきょくしょたかんしょう)

 ワキの下、頭皮、額、手のひら、足の裏など、汗腺が密集している特定の部位でのみ、汗を多くかく症状の総称です。

 明確な原因は分かっていませんが、遺伝子的要因、ストレスやホルモンバランスの崩れなどで自律神経が乱れることで汗の分泌が活発になるのでは、と言われています。

 原発性局所多汗症の中には、発症部位によって、さらに以下の4つに分類されます。

原発性手掌多汗症(げんぱつせいしゅしょうたかんしょう)

原発性手掌多汗症(げんぱつせいしゅしょうたかんしょう)の症状

 手のひらに大量の汗をかく症状で、症状が重い場合は、したたり落ちるほどの汗をかくようなこともあります。

 絶えず汗で湿っているため、指先が冷たくなりやすく、紫色調を帯びていることがあります。また湿った手のひらはあせも(汗疹)ができやすく、皮膚めくれたり、細菌感染を起こしやすいため注意が必要です。

 幼少児期や思春期頃に発症すると言われています。

症例出典:『皮膚科Q&A:汗の病気』公益社団法人日本皮膚科学会

原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)

原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)

 腋窩(ワキの下)に大量の汗をかく症状です。日本人の20人に1人はかかると言われており、決して珍しくない病気です。

 症状を放置している方も多いですが、近年では新薬が登場し、適切に治療を行うことで症状を改善することが可能となっています。当院では複数の治療を行っており、症状や一人ひとりのライフスタイルに合わせて、適切な治療法の提案を行っています。

多汗症(原発性腋窩多汗症)

原発性足底多汗症(げんぱつせいそくせきたかんしょう)

 足底に大量の汗をかく症状で、靴下がびしゃびしゃに塗れるほとの汗をかいたりします。原発性手掌多汗症と同時発症することが多くみられます。

原発性頭部顔面多汗症(げんぱつせいとうぶがんめんたかんしょう)

 頭部、顔面に多量の汗をかく症状です。暑い時、刺激物を食べた時、人は顔から汗をかきやすくなりますが、原発性頭部顔面多汗症の場合、暑くない状態でも汗が出ます。

 蒸発しにくく、ベタベタした汗をかくのが特徴です。

続発性局所多汗症(ぞくはつせいきょくしょたかんしょう)

 内科的疾患・外傷・腫瘍などが原因で発症するものです。解熱剤や向精神薬など、薬の副作用で発症することもあります。

全身性多汗症

 全身の発汗量が多くなる症状です。

原発性手掌多汗症の診断

 原発性手掌多汗症は、以下、日本皮膚科学会の『原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版』の診断基準によって診断されます。

原発性手掌多汗症の診断

原発性手掌多汗症の治療

 これまで、手掌多汗症に特化した治療法はありませんでしたが、2023年6月1日、ついに手掌多汗症専用の塗り薬が登場しました。

 使いやすい塗り薬のため、これまで症状を放置していた方も新薬の登場によって症状の改善が大きく期待できます。

アポハイド®ローション20%

 「アポハイド®ローション20%」(有効成分:オキシブチニン塩酸塩)は、2023年3月に製造販売承認を取得し、6月1日販売開始された、12歳から処方可能な日本初の保険適用手汗治療薬です。

 12歳以上の原発性手掌多汗症患者が使用したところ、投与4週後に、50%以上の患者の発汗量が改善されたとの報告があります。

 また、「1日1回寝る前に手のひらに塗るだけ」と、使いやすいのも特徴です。

「アポハイド®ローション20%」の効果

 多汗症の汗は、交感神経からでるアセチルコリンという物質が、「エクリン腺」という汗腺にあるアセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)と結合することで、発汗が促進されると考えられています。

 「アポハイド®ローション20%」は、アセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)を遮断することで、アセチルコリンとの結合を防ぐ作用があります。そのため、エクリン腺からの発汗が抑えられ、原発性手掌多汗症の改善効果を得ることができます。

 「アポハイド®ローション20%」の臨床試験は、12歳から77歳までの手汗がひどい人を対象にしたものです。

 試験の参加者は「アポハイド®ローション20%」かプラセボ(偽薬)を手に1日1回スプレーし、4週間後、「アポハイド®ローション20%」を使ったグループの52.8%が汗が半分以下に減ったのに対し、プラセボを使ったグループは24.3%でした。

 この結果から、「アポハイド®ローション20%」を使用した人々の方がプラセボを使用した人々に比べて、汗の量が減少したと言えます。

「アポハイド®ローション20%」の効果
「アポハイド®ローション20%」の使い方

 「アポハイド®ローション20%」は、1本で約1週間分の容量(1回5プッシュ使用)となっています。

「アポハイド®ローション20%」の使い方

【1】薬を塗る前に、手のひらの水分などをよく拭きます。

「アポハイド®ローション20%」の使い方1

【2】手のひらに薬を適量出します。(両手1回分の目安は5プッシュ)

「アポハイド®ローション20%」の使い方2

【3】左右の手のひらに均等に塗り広げます。
※手のひら以外の部分には使用しないでください。

「アポハイド®ローション20%」の使い方3

【4】薬を塗ったまま、就寝します。
※薬が乾くまで寝具などに触れないようにしてください。

「アポハイド®ローション20%」の使い方4

【5】起床後は、手を流水でよく洗ってください。
※手を洗った後、再度、薬を塗る必要はありません。

「アポハイド®ローション20%」の使い方5
薬を塗った後の注意事項

・絶対に目や口を触らないでください。
 万が一、目や口に薬が入った場合には、すぐに水で洗い流してください。異常を感じる場合は、すぐにご相談ください。

・顔や髪の毛などの体に触れないでください。

・歯磨き、シャワー、コンタクトレンズなどの扱いは避けてください。

・必要以上に他の人や物に触れないでください。

・何かの理由で塗布後に手洗いをした場合、再度薬を塗らず、翌日の就寝前に薬を塗るようにしてください。

「アポハイド®ローション20%」を塗った後の注意事項
「アポハイド®ローション20%」の主な副作用

・塗ったところに炎症やかゆみ、湿疹などの皮膚の異常がみられる
・口が渇く
・尿が出にくい、出ない
・何日も便秘が続き、お腹が張って苦しく感じる   など

上記のような症状が現れた場合には、薬の使用を中止し、当院までお問い合わせください。


画像出典:久光製薬株式会社 『アポハイドローション20%製品紹介』より

ボトックス注射【自由診療】

 ボトックス注射は、“シワ取り治療”として人気の高い美容治療のひとつです。また、「ワキ汗ボトックス」とも言われ、原発性腋窩多汗症治療としても広く行われていますが、原発性手掌多汗症治療にも有効です。

 ボトックス注射は、タンパク質の一種であるボツリヌス・トキシンから作られた製剤を使う治療で、一過性の筋肉麻痺を起す作用があります。この作用を利用することで「エクリン腺」の働きを抑制して、汗の分泌量を抑制します。

 注射だけという手軽さと、1回の治療で3~6か月程度効果が持続するという持続性の高さから、自由診療ながら高い人気を誇ります。

 当院のボトックス注射は、厚生労働省に承認されている、安全性の高いアラガン社製の「ボトックス ビスタ®」のみを使用しているため、初めての方でも安心です。

多汗症の治療:ボトックス注射【自由診療】

 ボトックス注射の詳細は、以下のページをご参考ください。

ボトックス注射

 原発性腋窩多汗症(ワキ汗)の症状や治療法についてお知りになりたい方は、以下の項目を参考にしてみてください。

原発性腋窩多汗症(ワキ汗)

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