円形脱毛症
円形脱毛症は、突然、円形に髪の毛が抜けてしまう脱毛症のことです。
1ヶ所だけでなく、複数個所で脱毛したり、頭皮全体など広い範囲の髪の毛が抜けることもあります。ゆっくり進行していく薄毛と異なり、突然髪の毛が抜けてしまうのが特徴です。
自然に治ることがほとんどですが、脱毛箇所が気になるのに放置をしたりすると、それがストレスとなって症状を悪化させてしまうことがあります。円形脱毛症は、重症化すると、頭皮だけでなく、眉毛やまつ毛、体毛と全身に症状が広がることがあります。
重症化すると治療が長期化するなど、完治が難しくなってくるため、脱毛症が疑われる際は、早めに診察にてご相談ください。
円形脱毛症の症状
円形脱毛症は、円形や楕円形に髪の毛が抜けてしまう症状です。
円形脱毛症の脱毛部では、完全に髪の毛が無くなってしまうのが特徴です。また、ゆっくりと進行するAGA・FAGAと異なり、当然、髪の毛が抜け落ちます。痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどないため、気づかないうちに脱毛箇所ができていたりします。
円形脱毛症は、性別や年齢に関わらず発症する恐れがあり、髪の毛の抜け方や範囲は人によってさまざまで、症状によって次のように分類されています。
単発型円形脱毛症
円形脱毛症の中で最も多く見られるタイプです。
年齢や性別に関わらず発症することがありますが、患者様の約8割が、発症後1年以内に治癒するとの報告があります。
しかし、症状を放置したりすると、多発型円形脱毛症に移行することもあるため注意が必要です。
多発型円形脱毛症
円形の脱毛が複数個所で起こる症状です。
単発型から移行することが多く、再発を繰り返すことがあり、完治するのに半年~2年程かかることがあります。
また、複数の脱毛箇所がつながり、脱毛範囲が大きくなってしまうこともあります。
蛇行型円形脱毛症
頭髪の生え際が帯状に脱毛する症状です。
単発型から移行することほとんどで、名前の通り、蛇のように脱毛範囲が広がっていきます。円形脱毛症の中では稀なタイプですが、治療に数年かかることもあるので、早期治療が重要です。
全頭型円形脱毛症
頭部全体の髪の毛が抜け落ちてしまう症状です。
多発型から移行することがほとんどで、症状が重いことから、治療が長期にわたることが多いとされています。そのため、円形脱毛症を発症した方は、全頭型に移行する前に、適切な治療を行うことが大切です。
汎発型円形脱毛症
頭部だけでなく、眉毛やまつ毛、ヒゲ、ワキ毛と、全身の体毛が抜け落ちてしまう症状です。
円形脱毛症の中で最も症状が重いタイプです。全頭型と同じように難治性の症状となるため、早めに適切な治療を行うことが必要となります。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因は明確には分かっていませんが、近年では、免疫機能の異常が発生する「自己免疫疾患」が関係していると考えられています。
他にも、次のような原因が挙げられます。
自己免疫疾患
近年、円形脱毛症の原因として有力視されているのが「自己免疫疾患」です。
免疫は、体外からの侵入物を攻撃して、体を守ってくれる機能です。しかし、何かしらの要因で免疫機能に異常が発生すると、正常な細胞や組織に対して過剰に反応して、攻撃をするようになります。
円形脱毛症は、異物と間違えて毛根が攻撃され、壊されることで発症すると考えられています。
なぜ毛根が攻撃されてしまうのか、その要因は明らかになっていませんが、毛根への攻撃を抑えることで、元通り髪の毛が生えるようになります。
アトピー素因
アトピー素因は、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎など、アレルギーを起こしやすい体質のことです。
円形脱毛症とアトピー素因との関連は、明らかになっていませんが、円形脱毛症の患者様の40%がアトピー素因を持っていると言われています。また、半数以上が家族にアトピー素因が認められることから、深い関係があると考えられています。
アトピー素因とは
- 本人または家族が、アレルギー性の病気を持っている(アトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など)
- アレルギーと関係深い免疫物質「IgE抗体」をつくりやすい体質を持っている
遺伝的要因
円形脱毛症の患者様の20%程が家庭内発生すると言われています。関連性は解明されていませんが、円形脱毛症には、遺伝的要因が関係する可能性が高いと考えられています。
精神的ストレスによる影響
精神的ストレスがあると、脱毛を発症することがあります。しかし、円形脱毛症の患者様の多くは、ストレスがなくても発症していることがほとんどです。
そのため、近年、ストレスは円形脱毛症の原因ではなく、発症要因のひとつとして考えられています。
円形脱毛症の治療
円形脱毛症の大部分は、適切な治療で徐々に治癒に向かいます。
しかし、脱毛が多発すると、日常生活に影響がでることもあります。また、全頭型から汎発型へと症状が悪化することもあるため、適切な治療を行うことが必要です。
ステロイドの内服薬、ステロイドやミノキシジルの外用薬による治療のほか、当院では、日本皮膚科学会の『円形脱毛症診療ガイドライン2017』に基づき、次のような治療も行っています。
ステロイド局所注射
免疫機能を抑制する効果のあるステロイドを、脱毛箇所に注入する治療法です。
発毛を促す治療となり、発毛が認められるまで、2週間から1ヶ月の間隔での治療を続けます。
局所免疫療法(現在、当院で取り扱いはありません)
円形脱毛症の原因として自己免疫疾患が考えられるため、免疫異常を抑制するための治療です。「SADBE療法」とも呼ばれています。
特殊な薬剤(SADBE、DPCPなど)を使って、脱毛箇所に意図的に炎症(かぶれ)を引き起こし、発毛を促す治療法です。
炎症を引き起こす治療となるため、かぶれや蕁麻疹(じんましん)などの副作用を生じることがあり、アトピー性皮膚炎の患者様は症状が悪化することがあるため、治療には注意が必要です。
局所免疫療法は、かなり高い効果が得られる治療ではありますが、現時点では保険適応ではないため、自由診療となります。
局所免疫療法による円形脱毛症の改善効果
症例出典:公益社団法人日本皮膚科学会『皮膚科Q&A:脱毛症』より
冷却療法
ドライアイスや液体窒素を脱毛箇所にあて、免疫細胞の働きを抑える治療法です。
液体窒素による冷凍凝固は、イボ取りなどの治療にも用いられています。治療の際、軽い痛みを生じますが、比較的広範囲の治療ができるというメリットがあります。
紫外線療法(ナローバンドUVB療法)
紫外線療法は、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬などの皮膚疾患に対して行われる治療法で、円形脱毛症でも保険適応があります。
脱毛箇所に紫外線をあてる治療法ですが、当院では、紫外線療法の中でも、最小限の副作用で高い効果が期待できる「ナローバンドUVB療法」を行っています。
円形脱毛症では、「部分型」のエキシマライトを治療の1つとして併用することで、改善を促進することが期待できます。
詳しくは、「ナローバンドUVB療法」の項目を参考してください。
ナローバンドUVB療法