手湿疹
手に起こる湿疹を手湿疹と言います。
刺激物質やアレルゲンと触れることで炎症が起き、湿疹が生じます。
医療従事者や理・美容師、飲食業のスタッフなど、日常的に化学薬品を取り扱ったり、水仕事をする方に多いと言われる皮膚疾患です。
手湿疹の原因
手湿疹の主な原因としては、「洗いすぎ」「かぶれ」「乾燥」の3つがあります。
「洗いすぎ」は、長時間にわたって水に触れることで皮膚がもつ保湿成分が流れ、またバリア機能が低下することで湿疹が起こりやすくなります。水を頻繁に扱う職業の方や、“主婦湿疹”と呼ばれることもあるように主婦の方に多くみられます。
「かぶれ」は、化学薬品によって起こるもので、パーマ液やカラーリングを取り扱う理・美容師、医薬品や消毒液を扱う医療従事者の方に多くみられます。
なお、手湿疹が金属による全身性アレルギー反応の一環となることもあり、病歴や皮疹の分布によっては金属パッチテストなどを行うこともあります。
手湿疹の患者さんは冬に多くなり、その原因の多くは「乾燥」です。特にアトピー性皮膚炎の患者さんは肌が乾燥しやすいため、手湿疹を発症することも多くなります。
手湿疹の症状
手湿疹にはさまざまな症状があり、皮膚の状態によって次のように分類されます。
角化型手湿疹
手のひらの皮膚表面の角質が厚くなり、ボロボロと剥がれる落ちる状態です。ひび割れができることもあります。
中高年の男性に多くみられる症状です。
進行性指掌角皮症
指先や指の腹が乾燥して、がさがさになる症状です。指紋がなくなり、ひび割れを起こすこともあります。
水に触れることが多い方、物理的に指先を酷使する方に現れる症状です。
貨幣状型手湿疹
手の甲に貨幣くらいの円形の湿疹ができる症状で、強いかゆみを伴います。
化学薬品などによるアレルギー性接触皮膚炎、アレルゲンに対して反応するアトピー型などで起こる症状です。
再発性水疱型(汗疱型)手湿疹
手のひら、指の側面に、2~5mm水ぶくれ(汗疱:かんぽう)が多発する症状です。左右対称に現れ、強いかゆみを伴います。
進行すると症状が広がり、赤くなったりすることがあります。
乾燥・亀裂型手湿疹
手のひら、指全体が乾燥して、ひび割れが起こる症状です。
皮膚のバリア機能が低下することで起こるとも言われ、乾燥が強い冬に悪化する傾向があります。
症例出典:公益社団法人日本皮膚科学会『手湿疹診療ガイドライン』より
手湿疹の診断
手湿疹には、真菌(カビの一種)が感染することで起こる手白癬やカンジダ症、ヒトヒゼンダニというダニの感染によって起こる疥癬など、似た症状の皮膚疾患が多くあります。そのため、適切な治療を進めるにあたって、正しく症状を見極めることが大切となります。
当院では、症状によって光学顕微鏡(クリティカル照明 LED)を使って真菌の有無を調べたり、他のアレルギー症状がないかなどを確認しながら、丁寧な診断を行っています。
手湿疹の治療
手湿疹の原因となる物質やアレルゲンとの接触を断つことが最も重要です。仕事上、避けることが難しい場合は、使用する薬剤を替えてみる、手袋を着用するといった工夫が必要です。
その上で、ステロイド外用薬にて治療を行います。かゆみが強いなど症状によっては、抗アレルギー内服薬を併用することもあります。
また、ワセリンやセラミド入りの保湿剤を使って皮膚の乾燥から防ぐことも大切です。皮膚のバリア成分を補いながら保湿することが、手湿疹の治療にもなり、予防にもなります。
一般皮膚科のアトピー性皮膚炎の項目もぜひ参考にしてみてください。
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