アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみの激しい湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚炎のことです。小児期に発症の多い疾患ですが、近年では成人発症例や再発例など、小児以外の幅広い年齢層で生じることもしばしばみられます。
アトピー性皮膚炎の方は、皮膚の内部で炎症が起こっており、皮膚のバリア機能が低下しています。そのため、外部からの刺激を受けやすく、我慢できないほどの「かゆみ」を引き起こします。皮膚をかくことで、さらにバリア機能の低下と炎症が起こり、悪循環(Itch-Scratch サイクル)に陥ります。
このように、治療して一時的に改善しても、時間が経つと症状が再び出てくるのがアトピー性皮膚炎の特徴です。
またアトピー性皮膚炎の方の多くは、アトピー素因を持っている(アレルギーを起こしやすい体質)のも特徴のひとつです。
アトピー素因とは
- 本人または家族が、アレルギー性の病気を持っている(アトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など)
- アレルギーと関係深い免疫物質「IgE抗体」をつくりやすい体質を持っている
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の主な症状は、「湿疹」と「かゆみ」です。
「湿疹」は、皮膚が赤くなる、細かいぶつぶつができる、ぼろぼろと皮がむけるなどの症状ですが、いずれも強い「かゆみ」を伴います。これらの症状は、年齢によってでやすい部位や症状が異なります。
乳児期(2歳未満)
顔や頭に現れやすい。
細かく、盛り上がったぶつぶつができたり、じくじくと液体がでたりする。
幼児期・学童期(2~12歳)
ひじの内側、ひざの裏側に現れやすい。
皮膚が乾燥して、かさかさと皮がむける。耳切れもよくみられる。
思春期・成人期(13歳以上)
顔、上半身と広範囲にわたって現れる。
乾燥が強く、皮膚がごわごわと硬くなる。長期的に湿疹が続くことで、色素沈着が起きやすい。
上記のような湿疹が6ヶ月以上(乳幼児では2ヶ月以上)続くと、アトピー性皮膚炎と診断されます。
症例出典:『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』公益社団法人日本皮膚科学会
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の主な原因は、「免疫の過剰反応」と「バリア機能の異常」です。
本来は、細菌やウイルスなどから守るための免疫反応が、アトピー素因などによって過剰に反応してしまうことで、不必要に皮膚内部で炎症を起こし、バリア機能を低下させます。また、ほこりやちり、細菌など外部からの刺激を受けたり、過労やストレスなどによってもバリア機能は低下します。
バリア機能が低下した皮膚は、外部からの刺激やアレルギー要因(アレルゲン)が侵入しやすく、ちょっとした刺激でもかゆみが起こりやすい状態となります。また、皮膚内部の水分を保てず、乾燥しやすくもあるので、皮膚をかきむしってしまい、さらにバリア機能を壊して炎症を起こすといった悪循環に陥りやすくなるのです。
「免疫の過剰反応」と「バリア機能の異常」は、さまざまな要因が重なって起こり、さらにその要因には個人差もあるため、治療が難しい疾患となっています。
アトピー性皮膚炎の治療
かゆみや湿疹を抑えるための治療が基本となります。
アトピー性皮膚炎は、症状や発症部位、原因などが個々に異なるため、患者さん一人ひとりの重症度やライフスタイルなどに合わせて治療を進めていきます。
治療を進める前に、 アレルギーの起こりやすさや原因を調べるため、血液検査や皮膚検査を行うことがあります。
外用薬:ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤、保湿剤など
内服薬:抗アレルギー薬など
また、塗り薬やスキンケア、悪化因子対策で軽快しない場合は、光線療法(全身型ナローバンドUVBまたはエキシマライト)を行うこともあり、日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』でも一定の効果が認められている治療法です。
現在のアトピー性皮膚炎の治療に限界を感じている方
当院では、外用薬や内服薬などの治療を継続的に行っているにも関わらず、充分な改善効果が得られない患者さんに対して、アトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント」の併用をご提案しています。
「デュピクセント」は、皮疹やかゆみの原因を選択的にブロックする画期的な治療薬で、中等症~重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、高い改善効果が期待できます。
ただし、使用する上で留意する点も多く、開始にあたっては十分な説明と準備が必要となります。詳しくは診察時に医師にお問い合わせください。