脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、頭皮や顔など、皮脂分泌の多い部位にできる湿疹です。「脂漏性湿疹」とも呼ばれます。
乳児から大人まで、幅広い年齢層で起こる病気です。
脂漏性皮膚炎の症状
脂漏性皮膚炎は、頭皮や顔などに、薄いかざぶたのような紅斑がみられる皮膚疾患です。
かゆみはあったりなかったりと個人差があります。皮脂分泌の多い部分で発症しやすく、額や鼻周り、髪の生え際などが赤くなり、フケのようなものもみられます。脂っぽい皮膚がポロポロとむけ落ち、粉をふいたような状態になることもあります。
顔の脂漏性皮膚炎
額や鼻、その周りが赤くなり、フケのようなものがみられます。
頭部の脂漏性皮膚炎
髪の生え際が全体的に赤くなり、頭部にフケがみられます。
脂漏性皮膚炎には、新生児・乳幼児期に生じる「乳児型」と、思春期以降にみられる「成人型」があります。
「乳児型」は一過性のもので、正しいスキンケアをすることで自然と治ります。
「成人型」は、40~50代の男性によくみられます。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、特に乾燥が強くなる冬に症状が悪化しやすくなります。
症例出典:マルホ株式会社『脂漏性皮膚炎って、どんな病気?』より
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因は明確には分かっていませんが、次のような、皮膚常在菌や皮脂分泌、ストレスなどの生活習慣がかさなって発症すると考えられています。
マラセチア菌
マラセチア菌は、皮膚常在菌であるカビの一種です。皮脂を栄養源として増殖します。
何かしらの要因で皮脂分泌が過剰になると、マラセチア菌が増殖し、その過程で皮膚を刺激して、脂漏性皮膚炎の発症・悪化につながると言われています。
皮脂の過剰分泌
食生活やストレスなどで皮脂が増えると、マラセチア菌の増殖などにもつながり、脂漏性皮膚炎の要因となります。
ビタミン不足
脂漏性皮膚炎の患者さんは、ビタミンB群が不足しているという報告があります。
ビタミン不足はストレスによっても起こり、皮脂の過剰分泌にもつながることもあります。
乾燥
乾燥が強くなる秋から冬の時期は、脂漏性皮膚炎の患者さんが増えたり、症状が悪化する方が多くいます。
乾燥は肌のバリア機能を低下させるほか、乾燥から皮膚を守ろうとして皮脂分泌が増えるため、それが脂漏性皮膚炎の原因になると考えられます。
脂漏性皮膚炎の診断
脂漏性皮膚炎を検査で確定することは難しく、問診や患部の観察も交えながらその他の皮膚炎ではないことを確認しながらの診断になることが多いです。
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、接触皮膚炎、カンジダ症、白癬、膠原病(皮膚筋炎など)との区別を要します。
脂漏性皮膚炎の治療
「成人型」の脂漏性皮膚炎は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返して、慢性的な経過をたどることが多いため、「薬物治療」と「生活習慣の改善」の2本柱で治療を行っていきます。
「薬物治療」では、炎症を抑えるステロイド外用剤、マラセチア菌の増殖を抑える抗真菌外用薬を組み合わせた治療を行います。かゆみが強い方には抗ヒスタミン薬を併用し、ビタミン剤の内服薬を処方することもあります。
「生活習慣の改善」では、皮膚を清潔に保つようにします。ただし、脂漏性皮膚炎が頭皮に生じた場合、フケを落とそうと強い洗顔料と使ったり、ゴシゴシこすったりする方がいますが、炎症を悪化させてしまうので注意しましょう。
刺激のない洗顔料で優しく洗い、清潔にすることが重要です。また食生活や睡眠不足の解消、疲労軽減など、日常生活を見直すことで予防効果を発揮します。
脂漏性皮膚炎の改善には時間がかかり、改善前に治療をやめてしまうと再発する可能性があります。日々のセルフケアを心がけ、根気強く治療を続けることが大切です。