ヘルペスと帯状疱疹の違いは?それぞれの原因や症状・治療方法・予防方法などを解説
ヘルペスと帯状疱疹はどちらも皮膚に発疹が現れる病気で、見分けがつきづらいため、症状に気付いてもどのように対処するべきか悩む方が多いです。
大まかな見分け方としては、ヘルペスは口の周りや性器・腰部周辺などの一部分に症状が現れ、帯状疱疹はデルマトームという脊髄から出る神経支配領域に沿った範囲で帯状(四肢の場合は縦になることもあります)に症状が現れます。
症状の違いや対処方法について知ることや、事前に予防方法を把握しておくことで、症状が現れても慌てることなく対処できるでしょう。
この記事では、ヘルペスと帯状疱疹の違いについて詳しく解説します。
ヘルペスと帯状疱疹を予防する方法についてもまとめているため、疑わしい症状でお悩みの方やこれらの病気を予防したい方はぜひ参考にしてみてください。
ヘルペスとは
ヘルペスは唇や口の周り、性器・腰部周辺などの一部分で発疹と水疱が出てくる病気です。
ここではヘルペスの原因、症状、感染経路、経過・再発の有無、治療方法などについて解説します。
ヘルペスウイルスの種類
ウイルス感染症の中には、ヘルペスウイルスによって引き起こされるものもあります。
人に感染するヘルペスウイルスは8種類あり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
種類 | 特徴 |
---|---|
単純ヘルペスウイルス1型 | 皮膚・粘膜に水疱ができる感染症の原因になる |
単純ヘルペスウイルス2型 | |
水痘帯状疱疹 (ヘルペスウイルス3型) |
|
エプスタイン-バーウイルス (ヘルペスウイルス4型) |
・伝染性単核球症の原因になる
・特定のがん(上咽頭がん、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫)に関与している |
サイトメガロウイルス (ヘルペスウイルス5型) |
・重篤な感染症の原因になる(新生児や免疫機能が低下している人)
・健康な人も伝染性単核球症に似た症状を起こすことがある |
ヒトヘルペスウイルス6型 | 突発性発疹(小児の感染症)の原因になる |
ヒトヘルペスウイルス7型 | |
ヒトヘルペスウイルス8型 | ・免疫機能が低下してる人に、特定のがん(カポジ肉腫やいくつかの種類のリンパ腫)を引き起こす原因になる |
知っていますか?
ヘルペスウイルスは症状が治まっても体内からいなくなることはなく、一部の細胞の中で休眠状態となり、生涯生き続けます。
つまり、ヘルペスウイルスは一度感染してしまうと、完全には除去することができないのです。
疲労やストレス、発熱などで体の抵抗力が落ちると眠っているヘルペスウイルスが再活性化し、病気の症状が再び現れることがあります。これが「再発」です。
再発時は最初にかかったときとは異なり、通常は症状が軽いことが多いです。
再発のタイミングはさまざまで、最初の感染からすぐ起こることもあれば、数年〜十数年後に起こることもあります。
今回紹介する「単純ヘルペスウイルス感染症」は単純ヘルペスウイルス1型・単純ヘルペスウイルス2型によって、「帯状疱疹」は水痘帯状疱疹(ヘルペスウイルス3型)によって引き起こされる病気です。
ヘルペスの原因
俗に言われるヘルペスは『単純ヘルペスウイルス』の感染により引き起こされます。
感染する部位によってウイルスの型が異なり、口唇ヘルペスはHSV-1、性器ヘルペスはHSV-2です。
単純ヘルペスウイルスは成人の約半数が子供のころに感染しているといわれ、唾液中に混ざっていることが多いとされます。
神経節に潜伏し、免疫機能が低下した際に再活性化して発症するのが特徴で、ストレスや疲労、ホルモンバランスの乱れなどが原因で再発を繰り返します。
主に性行為やオーラルセックスなどにより感染しますが、それ以外にもトイレやお風呂、コップ・箸などの共用により感染する場合もある感染力の強いウイルスです。
ヘルペスの症状
ヘルペスの症状は、神経痛(ピリピリ・チクチク)やかゆみからはじまり(前駆症状)、その後水ぶくれが複数できるのが特徴で、比較的限られた部位である唇や口周り、性器、腰部、肛門周囲などに出現します。
その後は赤く腫れあがることも多く、1~2週間程度でかさぶたになって治る場合が多いです。
神経痛やかゆみ以外にも、性器周辺にできたときには残尿感があったり、高熱が出たりする場合もあります。
また体調や疲労具合によっては症状が強く出る場合もあり、初めて感染した場合は特にその傾向が強いです。
ヘルペスの7〜8割は再発によるもののため、再発しないよう注意する必要があります。
ヘルペスの感染経路
ヘルペスは唾液や体液、皮膚接触などにより感染します。
具体的には以下のような感染経路が挙げられます。
- キスや性交
- タオルや食器の共用
- 便座等
特に症状が現れている期間はウイルスの排出が多くなり、感染リスクが高まります。
水ぶくれなどの症状が現れている間は患部を直接触らないように注意し、タオルの共用や性交渉などはなるべく控えましょう。
ヘルペスの経過や再発の有無
ヘルペスはピリピリとした違和感やかゆみなどの症状が最初に現れます。
その後半日程度経った頃に赤く腫れてきて、1〜3日程度経つと水疱に変わり、1〜2週間程度でかさぶたができて自然と剥がれ落ちます。
適切な治療を受ければすぐに症状が改善し、後遺症が残ることは基本的にありません。
しかし再発率が高い特徴があり、性器ヘルペスの場合は約7割の患者が年3回以上、約3割の患者が年6回以上再発するとされます。
再発が起こるタイミングや頻度には個人差がありますが、過労やストレスなどが原因で免疫機能が低下した際に引き起こされることが多いです。
ヘルペスの治療方法
ヘルペスの治療方法は内服薬と塗り薬の2種類があります。
治療に使用される主な薬とそれぞれの特徴は以下の通りです。
用法 | 特徴 | |
---|---|---|
バラシクロビル | 1日2回、通常5日間服用する | 錠剤タイプと顆粒タイプがあり、子どもでも飲みやすい |
ファムシクロビル | 1日3回、通常5日間服用する | 錠剤が小さく飲みやすい
再発性のヘルペスの場合はPIT療法(1日で終わらせる服用方法)による治療が可能 |
アラセナ-A軟膏®・ビダラビン軟膏® | 1日1~4回患部に適量塗る | 錠剤が苦手な人に適している
長期使用で耐性ウイルスの出現リスクが高まることが米国FDAにより指摘されている |
基本的には上記の治療薬を使用することで症状が改善されますが、症状が重症の場合や免疫機能が低下している場合には抗ヘルペス薬(アシクロビル、ビダラビン)の点滴静注が必要になります。
またヘルペスにより細菌の二次感染が起きている場合は、抗生物質の全身投与を行う場合もあります。
ヘルペスのPIT(Patient Initiated Therapy)療法
ヘルペスの再発を頻繁に繰り返す方に有効な治療法として注目されているのが、PIT療法(Patient Initiated Therapy)です。
PIT療法では、ヘルペスの初期症状が起こったときに、あらかじめ病院で処方してもらっておいた薬を患者さんの判断で服用します。いわば、ヘルペスの再発に備える治療です。
これまでは、ヘルペスの症状が出たら対症療法として抗ウイルス薬での治療を行う方法しかありませんでした。
症状が出たタイミングで病院を受診しなければならず、すぐに受診できなければ悪化し、治癒までに時間がかかってしまうことになります。
再発頻度が高いと生活の質(QOL)の低下にもつながるため、ヘルペスの再発に苦しんでいる方は、PIT療法を検討してみましょう。
現在承認されている薬には「ファムビル」と「アメナリーフ」があります。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は顔から足にかけて、デルマトームという脊髄から出る神経支配領域に沿った範囲で、左右どちらかに、帯状に発疹が現れる病気です。
ここでは帯状疱疹の原因や症状、感染経路、経過・再発の有無、治療方法などについてそれぞれ解説します。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスの感染が原因で引き起こされます。
初めて水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると水ぼうそうを発症し、症状が治まった後もウイルスは体内の神経節に潜伏します。
過労やストレスなどにより免疫機能が低下すると再びウイルスが活動し始め、皮膚と神経に炎症を引き起こして帯状疱疹を発症するのです。
一度水ぼうそうにかかったことのある人は誰でも帯状疱疹を発症するリスクがありますが、加齢によって免疫機能が低下しやすく50代以上の人は発症率が高くなります。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹は顔から足にかけて、デルマトームという脊髄から出る神経支配領域に沿った範囲で、左右どちらかに、帯状に発疹が現れる病気です。神経節に沿って複数の部位に症状が現れることもあります。
帯状疱疹の場合は神経痛が後遺症として残ることが多く、後遺症は半年~数年単位で残る場合も少なくありません。
帯状疱疹の感染経路
帯状疱疹の原因である水痘帯状疱疹ウイルスは感染力が強く、空気感染をすることはありませんが、水痘ワクチンを接種したことのない乳幼児・抗体の数が少なくなった高齢者・病気の治療で免疫抑制剤を飲んでいる方などは、帯状疱疹の皮疹や水疱に近距離でいたり、お互いの皮膚が接触することで水痘ウイルスに感染しやすくなることはあります。
帯状疱疹の水膨れから排出される液に触れることにより、ウイルスに感染することもあるため注意が必要です。
感染後すぐに帯状疱疹の症状が出るわけでなく、免疫機能が低下した際に再活性化することにより発症します。
帯状疱疹の経過や再発の有無
帯状疱疹は頭から足までの、左右どちらかの神経に沿って皮膚に痛みや違和感、かゆみなどが生じます。
ピリピリ・チクチクとした違和感や焼けるような痛みが特徴ですが、痛みの強さには個人差があり、人によっては発熱を伴うこともあります。
痛みや違和感が現れた数日後皮膚に小さな発疹が数個現れ、時間の経過とともに水疱に変化しながら広範囲に症状が広がっていくのが特徴です。
水疱は1週間〜10日程度でつぶれ、患部から液が排出されますが、これによって皮膚がさらに炎症を起こします。
炎症を起こした部分は赤くただれた後、数日でかさぶたになって自然と剥がれ落ちるというのが帯状疱疹の症状の一連の流れです。
帯状疱疹の原因である水痘帯状疱疹ウイルスに一度感染すると、帯状疱疹の症状が落ち着いた後もウイルスが完全に消えることはなく、神経節という太い神経の横に潜伏して免疫機能が低下した際に再発します。
再発するタイミングは個人差がありますが、確率は約4〜6%といわれています。なお、病気の治療で免疫抑制剤を飲んでいる方は、再発率がより高くなります。“再発率はシステマティックレビューによると1-6%の範囲の報告があり、その中でも長期観察研究においては5-6%とより高い傾向にあった”
帯状疱疹の治療方法
帯状疱疹は、ウイルスの増加を抑制するための抗ウイルス薬と痛みを抑えるための鎮痛剤の投与が主な治療方法です。
用法 | 特徴 | |
---|---|---|
アシクロビル | 1日5回、通常7日間服用する | 1回800mgの抗ヘルペスウイルス薬
腎臓の機能が悪い方は飲む量に注意が必要 |
バラシクロビル | 1日3回、通常7日間服用する | 1回1000mgの抗ヘルペスウイルス薬
腎臓の機能が悪い方は飲む量に注意が必要 |
ファムシクロビル | 1日3回、通常7日間服用する | 1回500mgの抗ヘルペスウイルス薬 腎臓の機能が悪い方は飲む量に注意が必要 |
アメナメビル | 1日1回、通常7日間服用する | 1回400mgの抗ヘルペスウイルス薬
腎臓の機能が悪い方も比較的安心して飲める |
潰瘍治療薬 | 患部に適量塗る | 水疱がつぶれ、潰瘍(キズ)の改善をサポートする |
塗り薬、飲み薬、点滴静注の順に効果が高くなり、軽度から中等度では抗ウイルス内服薬、重症の場合や免疫機能が低下している場合は入院して抗ウイルス薬(アシクロビル、ビダラビン)の点滴静注を行います。
体質や重症度、合併症などを考慮したうえで、上記を組み合わせて治療を行うのが一般的です。
ヘルペスや帯状疱疹は予防できる?
帯状疱疹はワクチン接種で予防できますが、そのほかにも以下のような方法で予防することが可能です。
- 免疫機能を高める
- バランスの良い食生活
- 適度に運動する
- 質の良い睡眠をとる
ここではヘルペスと帯状疱疹の予防方法について解説します。
帯状疱疹はワクチンで予防を
帯状疱疹はワクチン接種で予防可能です。
帯状疱疹予防ワクチンは50歳以上または帯状疱疹の罹患リスクが高い18歳以上の方なら、任意で接種できます。
帯状疱疹ワクチンは『ビケン』と『シングリックス®』の2種類あり、効果・副反応・接種回数などに以下のような違いがあります。
乾燥弱毒性水痘ワクチン『ビケン』 | 帯状疱疹ワクチン『シングリックス』 | |
---|---|---|
ワクチンの種類 | 生ワクチン | 不活性化ワクチン |
特徴 | 50~60%の予防効果があり、過去に水ぼうそうや帯状疱疹にかかったことのある方に適している | 97%の予防効果があり、長期間持続する |
帯状疱疹の予防効果 | 発症:51.3%減少
発症後の神経痛:66.5%減少 重症化:61.3%減少 |
50歳以上の発症:97.2%減少
70歳以上の発症:91.3%減少 発症後の神経痛:88.8%減少 |
副反応 | 発赤、腫れ、発疹、発熱など | 疼痛、痛赤、腫れ、吐き気、下痢、腹痛、頭痛、筋肉痛など |
持続効果 | 5年程度 | 9年以上 |
接種回数 | 1回 | 2回 50歳以上:2か月間隔 18歳以上:1~2か月間隔 |
制限 | 免疫抑制剤による治療を受けている方は接種不可 | 特になし |
シングリックス®のほうが予防効果は高めですが、ビケンと比べて副反応が出やすいリスクがあるため注意が必要です。
どちらのワクチンを接種するかは、医師と相談して決めることをおすすめします。
当院の帯状疱疹ワクチンの紹介ページはコチラ
帯状疱疹ワクチンの助成金について
「満50歳以上」かつ「板橋区に住民登録のある方」は、帯状疱疹ワクチンにかかる費用の助成を受けることができます。
ワクチンの種類ごとの助成金額・自己負担額・助成回数は以下のとおりです。
ワクチンの種類 | 助成金額 | 当院での自己負担額 | 助成回数 |
---|---|---|---|
生ワクチン「ビケン」 (乾燥弱毒性水痘ワクチン) |
4,000円 | 3,700円 | 1回まで |
不活化ワクチン「シングリックス®」 (乾燥組換え帯状疱疹ワクチン) |
10,000円/回 | 12,000円/回 | 2回まで |
助成制度を利用する場合は板橋区が発行する「帯状疱疹ワクチン予防接種予診票」の記入が必要となるため、ご希望される方はあらかじめお問い合わせください。
帯状疱疹は80歳までに3人中1人が発症すると言われていますが、近年ではワクチンによる予防が可能になっています。
助成金を利用すれば通常の半額以下でワクチン接種が可能なため、ぜひ受けてみてはいかがでしょうか。
免疫機能を高める
ヘルペスや帯状疱疹は免疫機能の低下によって発症するため、予防するためには免疫機能を高めることが大切です。
免疫機能が低下する原因は加齢や疲労、ストレスなどさまざまであるため、以下のような方法がおすすめです。
- 適度に運動をする
- バランスの良い食生活を心がける
- 質の良い睡眠をとる
- 腸内環境を整える
- ストレスを減らす
日頃からストレスを溜め込まないように注意し、規則正しい生活を送るようにしましょう。
バランスの良い食生活
ヘルペスや帯状疱疹を予防するために、バランスの良い食生活を心掛けましょう。
バランスの良い食事とは、三大栄養素の炭水化物・たんぱく質・脂質をどれかに偏らずに摂取することを指します。
これら三大栄養素には以下のような役割があり、いずれも欠かすことができません。
- 炭水化物:脳のエネルギー源
- たんぱく質:筋肉や臓器などの組織を作るもと
- 脂質:臓器や神経の構成成分になったりビタミンの運搬を助けたりする
上記の三大栄養素だけでなく食物繊維やビタミン、ミネラルなども積極的に加えながら、バランスの良い食生活にしましょう。
適度な運動
適度な運動もヘルペスや帯状疱疹の予防に効果的です。
普段運動する習慣がない方はスポーツなどのしっかりした運動でなく、散歩やウォーキングなどの軽い運動から始めるのがおすすめです。
激しい運動や長時間のトレーニングは逆に免疫機能を低下させる恐れもあるため、無理して行う必要はないでしょう。
質の良い睡眠
免疫機能を高めるためには、質の良い睡眠をとることも大切です。
質の良い睡眠とは、以下に当てはまるものを指します。
- 規則正しく睡眠・覚醒のリズムが保たれている
- 必要な睡眠時間が取れている
- 朝気持ちよくすっきり起きられる
- 布団に入ってから時間をかけすぎずに入眠できる
質の良い睡眠をとるためには、規則正しく生活すること、適度に運動すること、栄養バランスの整った食事をとることなどが大切です。
寝具が原因で睡眠の質が落ちてしまうこともあるため、枕や敷布団、マットなどの寝具選びにもこだわってみると良いでしょう。
まとめ
ヘルペスは一部分に発疹が現れ、帯状疱疹は体の前から後ろにかけて広範囲に発疹が現れる病気です。
今回症状や感染経路などについて詳しく解説しましたが、一般人からすると帯状疱疹とヘルペスは見分けがつきづらいです。
体に疑わしい症状が出たら自己判断するのではなく、まずは病院を受診しましょう。
成増駅前かわい皮膚科には皮膚科学会認定の皮膚科専門医が在籍しており、ヘルペスや帯状疱疹をはじめとしたさまざまな病気の治療に対応しています。
当院は板橋区帯状疱疹ワクチン任意接種協力医療機関であるため、満50歳以上で板橋区に住民登録のある方を対象に、帯状疱疹ワクチンを助成金補助でより低価格に接種することができます。くわしくはコチラ。
帯状疱疹のワクチン・予防接種や水ぼうそうの治療も行っているため、発疹でお悩みの方は一度当院までご来院ください。