粉瘤の治し方とは?治療後の過ごし方やリスクを解説

粉瘤は表皮嚢腫やアテロームとも呼ばれる良性の皮下腫瘍であり、初期段階では痛みなどの自覚症状はありません。
しかし、放置すると大きくなっていくためどうにか治したいと思う方もいるでしょう。
この記事では粉瘤の治し方や粉瘤治療後の過ごし方、治療のリスクなどについて解説します。
また、最後には手術以外に粉瘤を治す方法はあるのかについて触れています。
粉瘤ができて困っている方、どのような治し方があるのか知りたい方はぜひ最後までご覧ください。
粉瘤の治療について

粉瘤とは、皮下部分に袋状の構造物ができ、その袋の中に角質や皮脂などが溜まってしまう状態です。
初期段階では痛みなどの自覚症状はなく、気が付くとポコッとしたしこりを見つける場合が多いです。
初期段階から放置してどんどん大きくなると違和感を覚えたり、細菌感染を起こして激しい痛みや熱を感じたりすることもあります。
粉瘤の原因は明確に分かっていませんが、毛穴があるところであれば身体や顔などどこにでもできる可能性があります。
本来、毛穴が存在しない手掌(手のひら)と足底(足の裏)にはできないことになりますが、怪我や傷によって外傷性をきっかけとした粉瘤ができることがあります。
粉瘤は自然治癒しない
粉瘤はニキビなどに見た目が似ていますが、ニキビのように放置しても自然治癒はしません。
粉瘤を治すためには、皮下部分にできた袋や角質などの内容物を手術でしっかりと取り除く必要があります。
もし、袋や内容物が中途半端に残っていると、粉瘤が再発したり細菌が繁殖して腫れや痛みを伴ったり、稀ですが炎症が繰り返されることによって有棘細胞癌などの悪性腫瘍に変化する可能性もあります。
粉瘤ができた場合は自然治癒を目指して放置せず、できるだけ早く病院を受診するのがおすすめです。
粉瘤の治療は何科を受診?
粉瘤は似た症状の疾患も多数あり自然治癒もしないため、「粉瘤かな?」と思ったらできるだけ早く病院を受診するのがおすすめです。
粉瘤を疑った場合、どの科を受診するのが最も適しているのでしょうか。
まずは、しこりが本当に粉瘤であるのか、または見た目が似ている皮膚のできものなのか、問診・視診・触診を行い、必要時に応じて超音波検査(エコー検査)などの画像検査を組み合わせて調べていきます。
つまり、摘出するかどうか、どのような治療が必要であるかの判断は、まず正確な診断から始まり、治療対象の種類が判別してから、その診断に準じて適切な治療計画が立てられる医師に相談するのが望ましいことになります。
その点において、皮膚科専門医は皮膚腫瘍の診断経験が豊富であり、専門医取得の要件としても求められる皮膚腫瘍の外科的治療経験も有しているため、診断と治療の両方を繋げて考えることができます。
よって、粉瘤が疑われるものに限らず、皮膚にできたできもの(皮膚腫瘍)でお悩みの際は、皮膚科専門医を窓口に相談いただくのが、正しい診断と治療に辿り着きやすいと考えます。
粉瘤の治し方

粉瘤の治し方は基本的に手術のみです。
粉瘤の場所や大きさ、形状によってくり抜き法と切開法のどちらかが選ばれます。
ここでは、それぞれの治し方や適応、メリット・デメリットについて解説していきます。
くり抜き法
くり抜き法はへそ抜き法とも呼ばれており、現在では粉瘤治療の最も一般的な治し方です。
粉瘤の真ん中に円筒状のメスを使用して数mmの穴を開け、その穴から袋や内容物を押し出します。
穴は小さい時は縫合を行わず、軟膏とガーゼのみで傷口の保護をしつつ治るのを待つこともありますが、よりキズがきれいになると判断されれば、縫合も適宜します。
適応
くり抜き法は基本的にすべての粉瘤に対して対応できる手術方法です。
しかし、皮膚が厚い、炎症を繰り返し袋と皮膚が癒着している場合など一部くり抜き法では対応できない粉瘤も存在します。
そういった場合はくり抜き法ではなく次に紹介する切開法が選ばれる可能性もあります。
メリット・デメリット
くり抜き法のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・傷口が小さく跡が残りにくい
・短時間の手術で完了する ・炎症を起こした粉瘤にも対応できる |
・粉瘤がすべて取り切れない可能性がある
・大きすぎる粉瘤では取り出せない可能性がある |
傷痕をできるだけ残したくない場合や1日で手術を終わらせたい場合はくり抜き法の方がおすすめです。
しかし、粉瘤の大きさによってはくり抜き法でも縫合が必要になったり、すべての粉瘤が取り切れなかったりする可能性があります。
粉瘤が取り切れなかった場合、粉瘤の再発や細菌繁殖による腫れや痛み、最悪の場合はがん化するかもしれません。
切開法
切開法はくり抜き法が行われるまで、粉瘤手術法として一般的に行われていた方法です。
局部麻酔を行い、粉瘤部分をメスでレモン型に皮膚ごと切除・摘出し、止血を行ったあとに縫合します。
後日抜糸のために再度来院する必要があり、できるだけ傷痕を残さないように手術をして粉瘤の大きさと同じ傷痕が残る可能性があります。
適応
切開法はくり抜き法では対応が難しい、何度も炎症や再発をしていたり皮膚が分厚い場所にできたりした粉瘤に対して行われます。
また、仮に傷痕が残ったとしても分かりにくい場所でできるだけ再発したくない場合にも選ばれます。
メリット・デメリット
切開法のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・再発の可能性が低い
・くり抜き法では対応できない粉瘤にも対応できる |
・傷痕が大きくなる・残ってしまう
・後日抜糸のために来院する必要がある ・炎症粉瘤の場合は一度炎症を落ち着かせてから手術が必要 |
今でも切開法が選ばれる理由としては、粉瘤のすべてを摘出できるため再発の可能性が低く、くり抜き法では対応できない粉瘤にも対応できる点です。
再発率の低さからくり抜き法ではなく切開法をおすすめする医者もいます。
しかし、傷痕が残ってしまう可能性が高く、抜糸のために後日来院する必要があるため仕事などで2日程度の確保が難しい場合はくり抜き法の方がよいかもしれません。
粉瘤治療後の過ごし方

くり抜き法・切開法のどちらであっても、粉瘤治療後の過ごし方には少しだけ注意が必要です。
基本的に粉瘤治療後であっても激しく身体を動かさない内容であれば仕事をしても問題ありません。
少量の出血や腫れが見られることがありますが、問題ないことが多いです。
しかし、出血が多い場合や痛みが増している場合は速やかに手術を行った病院を受診しましょう。
また、出血や痛みを増加させないために、血行が良くなる行為は避けましょう。
血行が良くなる行為としては、激しい運動・飲酒・入浴などです。
激しい運動と飲酒に関しては手術当日・翌日は控えるのがおすすめです。
運動に関しては、粉瘤があった場所によっても対応が異なるため、必ず医師の指示を守りましょう。
入浴に関しては、シャワーであれば傷口に当てないようにすれば手術当日から可能です。
浴槽での入浴は抜糸するまでか傷口が塞がる1週間程度が経過してからにしましょう。
粉瘤治療のリスク

粉瘤治療は「身体にメスを入れる手術」であるため、いくつかのリスクが存在しています。
ここでは粉瘤治療の主なリスクについて3つ紹介します。
再発の可能性がある
粉瘤は再発することが多い病気の1つです。
粉瘤の再発の可能性をできるだけ低くするためには、粉瘤の袋や内容物をすべて綺麗に取り除く必要があります。
粉瘤をすべて取り除ける可能性が高い手術法として切開法がありますが、切開法でも100%すべての粉瘤を取り除けるわけではありません。
特に細菌感染で炎症が起きた粉瘤はより再発リスクが高くなります。
合併症
粉瘤治療はくり抜き法のように小さくても人体にメスを入れるため、合併症のリスクが存在します。
粉瘤治療で考えられる合併症は以下の4つです。
- アレルギー反応:局所麻酔に使用する麻酔薬によるアレルギー
- 血腫:縫合部分に血がしみだし血腫(ちだまり)が起こりやすくなる・血腫になった場合は除去手術が行われる
- 化膿:まれに化膿する可能性があり、とくに炎症性粉瘤の手術の場合は化膿する可能性が高くなる
- 肥厚性瘢痕・ケロイド:傷を修復しようとする反応で傷痕が盛り上がって硬くなる・体質や粉瘤のあった場所によって個人差が大きい
化膿リスクに関しては、化膿予防として抗生物質を処方してもらえたり、抗生剤の予防投与が行われたりします。
アレルギーや化膿など不安な点があればあらかじめ医師に相談しておきましょう。
場合によっては合併症の対処をしてもらえたり、アレルギーになりにくい麻酔薬を選んでもらえたりします。
傷痕
粉瘤治療を行ううえで、気になるのは傷痕の有無でしょう。
粉瘤治療の傷痕はよほど大きくなった粉瘤や炎症性粉瘤でなければ、切開法で治療を行ったとしても目立つ傷痕が残る可能性が低いです。
顔など人目の付く場所に粉瘤ができてしまい、できるだけ傷痕を残したくない場合は早期治療を心がけ粉瘤治療を得意としている病院を受診しましょう。
しかし、人体にメスをいれるため絶対に傷痕が残らない方法はありません。
不安な場合は、医師に「できるだけ傷痕を残したくない」旨を伝えましょう。
粉瘤は手術以外に治し方はある?

顔などに粉瘤ができた場合、傷痕が残る可能性のある手術はできるだけ避けたいと思う方もいるでしょう。
ここでは粉瘤は手術以外に治し方はあるのか解説していきます。
内服薬・外服薬では治せない
粉瘤は内服薬・外服薬では治せません。
しかし粉瘤が細菌感染を起こし、炎症性粉瘤になっている場合は、そのまま手術をすると内容物の取り残しや化膿などのリスクが高くなります。
そのため、一度抗生物質が処方され炎症を抑えてから手術を行う場合があります。
この抗生物質はあくまでも粉瘤の炎症を抑えるためのものであり、粉瘤を治すためではありません。
また、「吸い出し軟膏」と呼ばれる市販薬がありますが、こちらは化膿性皮膚疾患に有効な薬です。
硫酸銅やサリチル酸などの働きによって膿を排出する効果が期待できますが、粉瘤の場合は内容物を排出できても袋が残ってしまいます。
そのまま放置すると再度角質などが溜まり、再発リスクが高くなるため医師の診断なしに使用するのは避けましょう。
自分でつぶすのは危険
粉瘤の中央には黒点があり、ニキビのようにそこから自分で内容物を出して潰してしまう方もいるかもしれませんが、これは危険です。
粉瘤を自分で潰すと開口部が広がり、細菌が入り込みやすくなりもともとの粉瘤よりも2~3倍の大きさになってしまう可能性があります。
そうなると、手術をしても傷痕が残りやすくなります。
仮に内容物が出てしまった場合は押しだすようなことはせず、触らないようにしながら病院を受診しましょう。
まとめ
この記事では粉瘤の治し方や粉瘤治療後の過ごし方、治療のリスク、手術以外に粉瘤を治す方法などについて解説しました。
粉瘤は放置しても自然治癒しないため、くり抜き法や切開法などの手術で粉瘤の袋と内容物を摘出する必要があります。
成増駅前かわい皮膚科は皮膚科専門医・がん治療認定である院長が傷痕の目立たない粉瘤手術を行います。
特別大きくない粉瘤であれば局所麻酔で日帰りによる手術が可能で、できるだけ傷痕が目立たないように、くり抜き法を第一に選択しています。
もし、「粉瘤かも?」と思う腫瘍ができた場合は、ぜひ一度成増駅前かわい皮膚科までご相談ください。