蕁麻疹の対処法を原因や種類別の特徴とともに紹介
皮膚の一部が一時的に赤くなり、蚊に刺されたように盛り上がる蕁麻疹。かゆみを伴うことも多いため、対処法を知りたい方も多いのではないでしょうか。
蕁麻疹の症状の現れ方は人によって異なり、数時間以内に消失することもあれば、腹痛や下痢、喉の腫れによる呼吸困難などの危険な症状が現れることもあります。
原因がわからないことも多いものの、場合によっては特定の物質を避けたり生活習慣の見直しを行ったりなどの対処をすれば、症状の出現を抑えられる可能性もあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。
この記事では、蕁麻疹の症状や原因、種類、対処法を紹介します。すぐに受診すべき症状や医療機関での検査と治療方法についても解説いたしますので、ぜひご覧ください。
蕁麻疹の症状
蕁麻疹の主な症状は、『膨疹』と『むくみ』です。
皮膚の一部が赤くくっきりと盛り上がってかゆみが生じますが、多くの場合、数時間以内に跡を残さず消失していきます。
大きさは1〜2mm程度のものから10cmを超えるものまでさまざまで、膨疹同士がくっついて大きな地図のようになることもあります。
むくみが強いケースでは、境界線がはっきりしておらず、激しいかゆみを伴うことがほとんどです。
皮膚症状の持続時間は、大多数が数十分から数時間以内ですが、数日続く例もあります。症状を発症してから6週間以内のものを急性蕁麻疹と呼び、6週間越えたものを慢性蕁麻疹と呼びます。
蕁麻疹を引き起こす原因
蕁麻疹を引き起こす原因は人によってさまざまで、明確に原因がわかるものもあれば、原因が不明のものもあります。
実際のところ、はっきりと原因がわかるケースは全体の10〜30%程度で、多くのケースで原因を特定できないのが現状です。
特定の食品や食品添加物、物理的な刺激などによって起こる可能性がありますが、大人は過度のストレスや疲労、子どもは風邪などの感染症が原因となることも少なくありません。
ここでは、蕁麻疹を引き起こす主な原因を6つ紹介します。
特定の食品・食品添加物
特定の食品や食品添加物によって蕁麻疹が起こる可能性があります。
アレルギーの原因物質を含む食品や食品添加物を食べたり触ったりすることで、アレルギー反応が起こり、蕁麻疹が出現します。
以下は、蕁麻疹の発症や悪化に関わるとされる食べ物と食品添加物です。
- 食品:エビ・カニ・サバ・サンマ・肉類・鶏卵・牛乳・小麦・ソバ・果物・香辛料など
- 食品添加物:黄色や赤色などの人工色素、パラベンなどの防腐剤、サリチル酸など
原因となる物質は検査をすることでわかりますが、食品が原因であっても特定できないケースもあります。
例えば、たけのこのアセチルコリンや、サバなどの青魚に多く含まれるヒスチジンにヒスタミン産生菌酵素が作用してヒスタミンが産生される特殊な仕組みなどによって、一般的なアレルギー性蕁麻疹とは異なるメカニズムで蕁麻疹が生じる可能性もあります。
過度なストレス・疲労・睡眠不足
過度なストレスや疲労、睡眠不足は、直接的に蕁麻疹の原因になるわけではありませんが、体を蕁麻疹が起こりやすい状態にしてしまうことがあります。
ストレスなどによって体の反応閾値(はんのういきち=刺激が発生する最低値のこと)が下がってしまうと、普段は平気な刺激であっても皮膚がその刺激に反応して蕁麻疹が発症するため、ストレスが原因で蕁麻疹が起こっているように見えます。
しかもストレスの具合によって刺激に反応するときもあればしないときもあり、なかなか直接的な原因にたどり着けないことも少なくありません。
感染症・全身の疾患
感染症や全身の疾患なども蕁麻疹の原因になることがあります。症状は毎日現れることが多いです。
急性蕁麻疹は細菌やウイルス感染によって起こることが多いですが、膠原病や甲状腺疾患、ウイルス性肝炎などの全身・内臓疾患の症状のひとつとして蕁麻疹が出ることもあるため、皮膚以外にも症状がある場合は早めに医療機関で検査を受けましょう。
物理的な刺激
日光や寒冷・温熱刺激、衣類による刺激や圧迫などの物理的な刺激によっても蕁麻疹が起こることがあります。
それぞれ、日光照射によるものを『日光蕁麻疹』、寒冷刺激によるものを『寒冷蕁麻疹』、温熱刺激によるものを『温熱蕁麻疹』、衣類による刺激など機械的な摩擦によって起こるものを『機械性蕁麻疹』と呼びます。
原因がはっきりしている場合は、その刺激を避けると蕁麻疹ができにくくなるでしょう。
汗
入浴や運動、緊張時などに汗をかくと蕁麻疹が現れることがあります。
汗が原因の蕁麻疹は、小児から20代頃に起こることが多く、1〜4mmの小さな膨疹が現れるのが特徴です。通常、膨疹の周りを発赤が取り囲むようになり、周りが白く抜けたように見えることもありますが、場合によっては小さな発赤がつながったようになることがあります。
他の蕁麻疹のように大きく平べったい膨らみになることはなく、出現して30分〜1時間以内に消失することがほとんどです。
運動
運動後に蕁麻疹が起き、その原因が汗ではない場合は注意が必要です。
具体的には、ある特定の食べ物を食べてから2時間以内に運動をすると、アナフィラキシーが起こって蕁麻疹を含む、全身のかゆみや熱感、紅斑、血管浮腫、腹痛、下痢、嘔吐などの症状が現れる可能性があります。
食べ物もしくは運動のどちらか単独ではアレルギーを起こしませんが、それらが合わさるとアレルギー反応を起こして蕁麻疹などの症状が発生します。なお、運動ではなく入浴時の発症なども報告があります。
蕁麻疹の種類
蕁麻疹は原因や症状の現れ方によっていくつかの種類に分類されます。
とはいえ、原因が複数重なり合ったり数種類の蕁麻疹が同時に起こったりすることもあるため、はっきりと分類できない場合もあります。
ここでは、主な蕁麻疹の種類を紹介しますが、症状が長引く場合は自己判断せず、早めに医療機関へ相談しましょう。
急性蕁麻疹
毎日繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して6週間以内のものを『急性蕁麻疹』といいます。
突然、蚊に刺されたような発疹や地図のようなかゆみを伴う小さな膨らみが皮膚にでき、数時間のうちに出たり引いたりを繰り返します。
主な原因は、細菌やウイルス感染です。他には薬剤や食べ物、花粉、ハウスダストなどによって起こることがありますが、複数の要因で発症することも多く、7割以上は原因が特定できないといわれています。
慢性蕁麻疹
毎日繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して6週間以上のものを『慢性蕁麻疹』といいます。
夕方から夜間にかけて症状が出現または悪化するケースが多く、原因の特定は多くの場合で困難とされ、症状は数カ月から数年に渡ることもあります。
稀に喉の粘膜が腫れたり呼吸が苦しくなったりすることもあるため、このような症状がある場合は放置せず、医療機関で適切な対処をすることが大切です。
白血球の一種である『マスト細胞』が何らかの要因で活性化されることが原因となるケースが多いですが、そのきっかけとなる要因はわからないことがほとんどです。
アレルギー性蕁麻疹
特定の物質(アレルゲン)に対するIgE抗体を介したアレルギー反応によって起こるものを『アレルギー性蕁麻疹』といいます。
全身に蕁麻疹が現れ、唇や口の中などにかゆみが生じたり、ひどくなると呼吸困難や血圧低下、意識レベル低下などのアナフィラキシーショックが起こった場合は、ただちに医療機関を受診しなければいけません。
原因には食品や薬剤、昆虫、植物などがあり、それらの物質を食べたり触れたりした数分〜数時間以内に症状が現れます。
症状が高頻度で出る方は、外出時に抗アレルギー薬を携帯(症状が強い方はエピペン®注射液を携帯)し、万が一の事態に備えていつでも内服できるように準備しておくことが望ましいでしょう。
なお、薬を服用した後は再度症状が悪くなることも想定し、そのまま帰宅するのではなく、抗アレルギー薬が効力を発揮してるうちに、救急対応ができる医療機関で診察を受けることが推奨されます。
物理性蕁麻疹
皮膚に物理的な刺激を受けることで起こるものを『物理性蕁麻疹』といいます。
原因には、日光や寒冷、温冷などの刺激、皮膚への機械的刺激や圧迫などがあり、原因によって蕁麻疹が発生する仕組みや症状の出方が異なります。
蕁麻疹の原因となる刺激を血液検査で特定し、取り除いたり回避したりなどの対処を行えば、症状は起こらなくなるでしょう。
コリン性蕁麻疹
発汗をつかさどる『アセチルコリン』という神経伝達物質にかかわるものを『コリン性蕁麻疹』といいます。
命にかかわることはなく、症状も長時間続くものではありませんが、生活するうえで不便を感じることがあるかもしれません。
原因となるのは、入浴や運動などによる汗の刺激です。精神的に不安定だったり強いストレスを感じたりしている場合も、症状が出やすくなります。
まれに、汗が出づらくなる自己免疫疾患である『特発性後天性全身性無汗症 (AIGA:acquired idiopathic generalized anhidrosis)』を併発することがあるため、注意が必要です。
食物依存運動誘発アナフィラキシー
食物アレルギーの一種で、運動をすると症状が現れるものを『食物依存運動誘発アナフィラキシー』といいます。
多くの場合、特定の食べ物を食べてから2時間以内に運動すると、全身の蕁麻疹やむくみ、咳き込み、呼吸困難などの症状が現れます。
症状の進行が早く、半数近くが血圧低下によるショック症状を起こすため、ただちに救急車を呼ぶなど迅速に対応しなければいけません。
原因となる食べ物は、小麦や植物油で揚げたエビ、カニ、イカ、貝類、ブドウ、モモなどです。アスピリン製剤を服用していると誘発されやすく、運動量の多い全身運動を行ったあとは症状が起こりやすくなります。
外出時に抗アレルギー薬を携帯(症状が強い方はエピペン®注射液を携帯)し、万が一の事態に備えていつでも内服できるように準備しておくことが望ましいです。
なお、抗アレルギー薬やエピペン®注射液の使用後は、再度症状が悪くなることも想定し、そのまま帰宅するのではなく、薬が効力を発揮してるうちに救急対応ができる医療機関で診察を受けることが推奨されます。
蕁麻疹の対処法
基本的に蕁麻疹は一時的な症状であり、数時間程度で症状が治ることも多いため、重症化していなければ自宅で対処できる可能性があります。
ここでは、蕁麻疹の対処法を7つ紹介します。
原因だと予想される飲食物を避ける
蕁麻疹の原因となる飲食物が大体予想できている場合は、それらを摂取せずに生活することで蕁麻疹の発症を予防できる可能性があります。
動物性タンパク質や油だけでなく、アルコール、辛い食べ物、チョコレートなどの刺激物は蕁麻疹を助長してしまう恐れがあるため、症状があるときはこれらの摂取も控えるようにしましょう。
ストレスを発散する
蕁麻疹に限らず、ストレスは心身の不調の原因となるため、日頃から適度に発散しておくことが大切です。
ストレスを自覚していなくても、引越しや進学、仕事での昇進、結婚や出産などのライフスタイルの変化でも、知らず知らずのうちにストレスが溜まっている可能性があります。
生活にヨガを取り入れる、お気に入りのハーブティーを楽しむなど、自分なりのストレス発散法を見つけておくとよいでしょう。
職種によっては、あらかじめ繁忙期が予見できるケースもあるため、その時期の直前からできるだけ疲労がたまらないように、不必要な付き合いや夜更かしなどを減らすことも一助になるかもしれません。
生活習慣を整える
不規則な生活や睡眠不足など、生活習慣が乱れると疲れがうまく解消できずに蕁麻疹ができやすくなってしまうため、規則正しい食事や質の良い睡眠など、日頃から生活習慣を整えておきましょう。
眠っても疲れが取れないと感じるときは、日常的に適度な運動を取り入れると、睡眠の質がよくなって自律神経が整ったり免疫力が高まったりして、蕁麻疹が出にくくなる可能性があります。
睡眠時間の確保、寝室の環境整備など身近な要素から、睡眠時無呼吸など医学的な要素まで、対策可能なものを見直すことが推奨されます。
締め付けが強い下着や衣服を避ける
締め付けが強い下着や衣類の着用によって蕁麻疹が起こっている場合は、サイズの合う下着や衣類に変えてみるなどして対処しましょう。
よく着用している下着や衣類で蕁麻疹が起こった場合は、洗濯で残った洗剤の化学物質も合わさって蕁麻疹が起こっている可能性があるため、低刺激の洗剤に変えてみることをおすすめします。
運動を控える
運動をして汗をかいたあとに蕁麻疹ができる場合は、回復するまでの間は運動を控えることが大切です。
かゆみを我慢できないときは、水で濡らしたタオルやタオルで包んだ保冷剤などで患部を冷やすと、少し楽になります。
なお、特定の食べ物を食べたあとに運動をして蕁麻疹が出たことがある場合は、運動前に原因となる食べ物を避けるか、食べたあとの運動を控えるなどして対処しましょう。
運動中に蕁麻疹が出てきた場合は、ただちに運動を中止して医療機関を受診してください。
空気清浄機を設置する
花粉やハウスダストなどのアレルギーによって蕁麻疹が出ている場合は、空気清浄機を設置して原因物質を除去しましょう。
また、こまめに掃除や空気の入れ替えを行うことも、アレルギーによる蕁麻疹の予防に有効です。
医療機関を受診する
蕁麻疹が繰り返し出る場合や症状が長引いている場合、だんだんと広がっている場合などは、別の病気が原因となっている可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
症状が蕁麻疹のみの場合は皮膚科を、発熱や咽頭炎などの症状も併発している場合は内科を受診する必要があります。
すぐに病院を受診すべき症状とは?
以下のような症状が現れた場合は、すぐに病院を受診してください。
- 呼吸が苦しい
- 蕁麻疹だけでなく唇やまぶたが腫れている
- 下痢や吐き気がある
- かゆみや痛みの症状が強い
- 症状がだんだんと広がっている
- 意識がなく、声かけにも反応しない
蕁麻疹の症状がある場合、アナフィラキシーが疑われる状況でなければ救急で病院へ行く必要はありません。
自宅で様子をみる際は、皮膚の症状だけでなく、喉がつまる間隔や呼吸時にヒューヒュー聞こえる呼吸器症状、吐き気や腹痛などの消化器症状、めまい立ちくらみなど血圧低下による循環器症状が出ていないかよく観察しておきましょう。
なお、アナフィラキシーではない場合でも、蕁麻疹が何日も引かない場合などは、皮膚科を受診することをおすすめします。
症状があるときに写真を撮っておくと、万が一症状が消失してしまっても受診の際に役立ちます。
医療機関での蕁麻疹の検査と治療方法
蕁麻疹の原因を明らかにするためには、医療機関を受診して医師の診察を受けることが大切です。
原因がはっきりとわからないことも多いですが、症状から適切な治療を提案してくれるため、赤みやかゆみを軽減するためにも、症状が長引く場合や広がっていく場合などは、速やかに受診しましょう。
ここでは、蕁麻疹で医療機関を受診したときに行う検査と治療方法について解説します。
蕁麻疹の検査方法
医療機関での蕁麻疹の診断には、問診と視診が重要となります。そのため、蕁麻疹の原因となる可能性のある食べ物や薬、植物などと接触しなかったか、症状が出たのはいつからなのかなどを覚えておきましょう。
問診と視診の結果、特定の物質が原因となっていることが予想される場合は、血液検査(特異的IgE抗体検査)などを行い、症状と照らし合わせながら総合的に判断します。
急性蕁麻疹の場合は、原因となる物質を特定せず、治療を進めることもあります。
蕁麻疹の治療方法
蕁麻疹に対する治療は、内服薬で行うのが一般的です。
蕁麻疹は原因がはっきりわからないことが多く、血液検査で陽性であってもそれが原因だと断定することができないため、原因の特定よりも内服薬での治療を先行して行うことも少なくありません。
治療で使用する内服薬は、日本皮膚科学会のガイドラインに準じて、抗ヒスタミン薬・H2拮抗薬・抗ロイコトリエン拮抗薬を組み合わせて使用し、内服薬で難治性の場合は、抗IgE抗体オマリズマブの注射薬を使用することが検討されます。
当院の蕁麻疹治療の詳細はコチラ
UCARE(蕁麻疹国際診療センター)認定病院との連携
当院と連携関係にある、日本大学板橋病院アレルギーセンター(皮膚科)、昭和大学皮膚科は、いずれもUCARE(蕁麻疹国際診療センター)の認定を受けています。
UCARE(蕁麻疹国際診療センター)は、「蕁麻疹患者を多数診療」・「蕁麻疹に関する英語の研究論文を発表している」など、32項目におよぶ基準をクリアした、高度かつ専門的な蕁麻疹診療が可能と判断された医療機関のみが、GA2LEN(世界アレルギー・喘息欧州ネットワーク)によってリスト登録される国際的認証制度です。
当院では、通常診療ではなかなか改善がみられない難治性蕁麻疹や特殊な原因を有する蕁麻疹に対して、世界的に認められた蕁麻疹専門施設と密接な医療連携を行うことで、より幅広い選択肢を患者様に提供できるよう心がけております。
まとめ
蕁麻疹は皮膚の一部が赤く腫れてかゆみを伴うなど、つらい症状が現れる皮膚疾患です。
蕁麻疹が起こったら、できるだけきっかけとなった要因を特定することが大切ですが、原因が不明のままになってしまうことも少なくありません。
一般的に、蕁麻疹は数時間程度で治ることが多いため、数日経過しても症状が治まらない場合や蕁麻疹の範囲が広がっていく場合などは、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
東京都板橋区にある成増駅前かわい皮膚科は、東京メトロ有楽町線・副都心線の地下鉄成増駅2番出口から徒歩5秒のところにある皮膚科クリニックです。新生児からご年配の方まで、年齢にかかわらずどんな些細な症状からでも診察を受け付けています。
蕁麻疹は受診前に症状が消失してしまうことも多いですが、定期的に起こる場合は自己判断せずに早めに成増駅前かわい皮膚科までご相談ください。