多発性汗腺膿瘍(たはつせいかんせんのうよう:あせものより)
多発性汗腺膿瘍(たはつせいかんせんのうよう)は、あせも(汗疹)の合併症のひとつで、一般的には「あせものより」と呼ばれています。あせも(汗疹)が生じた皮膚をかくなどして悪化させたり、治療が長期化すると、あせもに細菌が感染して多発性汗腺膿瘍を発症します。
同じく、あせも(汗疹)の合併症である伝染性膿痂疹(とびひ)とは異なり、伝播はしませんが、痛みや発熱を伴うことがあります。
多発性汗腺膿瘍(あせものより)の原因
汗を分泌する汗腺は、エクリン腺とアポクリン線の2種類があります。そのうち、全身の体温調節をするエクリン腺が、何らかの原因でつまってしまうと、あせも(汗疹)を発症します。
あせも(汗疹)は、乳幼児に多い皮膚疾患ですが、大人でも発症することがあります。しかし、あせも(汗疹)はかゆみを伴うため、皮膚が未熟な乳幼児は、皮膚をかくことで悪化しやすく、合併症を伴うことも少なくありません。
あせも(汗疹)の発症メカニズム
多発性汗腺膿瘍は、あせも(汗疹)の合併症です。皮膚をかきむしることで、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌がエクリン汗腺に入り込み、発症します。細菌に感染すると、エクリン汗腺内で化膿が起こり、膿の溜まった赤いぶつぶつ(膿疱)ができます。
あせも(汗疹)の合併症には、多発性汗腺膿瘍のほか、伝染性膿痂疹(とびひ)があります。伝染性膿痂疹(とびひ)については、以下の項目をご参照ください。
伝染性膿痂疹(とびひ)多発性汗腺膿瘍(あせものより)の症状
主に、乳幼児の顔、頭、背中、おしりに、膿の溜まった赤いぶつぶつ(膿疱)ができます。痛みを伴い、患部を押すと痛みが強くなるのが特徴です。
発症時は、硬く“しこり”のようなものが、症状が悪化して膿がどんどん溜まると、ブヨブヨとした水っぽい触感になります。症状を放置したり、治療が長引くと、皮膚内部で炎症が進行し、周辺組織を傷つけます。そのため、治癒した後にも、皮膚にくぼんだような瘢痕を残すこともあります。
また発熱を伴うこともあり、乳幼児に生じた場合、夜泣きや哺乳力の低下などがみられることもあります。
多発性汗腺膿瘍(あせものより)の診断
多発性汗腺膿瘍は、あせも(汗疹)が悪化した症状ですが、炎症の進行がひどい場合、視診だけでは、毛包炎など他の化膿性皮膚疾患との判断が難しいこともあります。
その場合、膿瘍から膿を採取し、多発性汗腺膿瘍の原因となる黄色ブドウ球菌の存在を確認した上で、適切な診断を行います。
多発性汗腺膿瘍(あせものより)の治療と予防
多発性汗腺膿瘍の治療では、黄色ブドウ球菌に有効な抗菌外用薬(塗り薬)を使用します。症状に応じて、抗菌内服薬(飲み薬)を併用することもあります。
膿瘍が大きい場合などは、患部を切開して膿を出す、切開排膿を行うこともあります。
多発性汗腺膿瘍は、あせも(汗疹)が悪化して発症するため、あせも(汗疹)ができないよう予防することも大切です。
乳幼児は、発汗コントロールがうまくできないことから発汗しやすいため、こまめに着替えをさせて汗が溜まらないようにし、肌を清潔に保つようにしましょう。皮膚をかいて傷つけないよう、爪を短く保つことも重要です。
多発性汗腺膿瘍(あせものより)の関連項目
あせも(汗疹)、伝染性膿痂疹(とびひ)については、以下の項目をご参照ください。
あせも(汗疹)伝染性膿痂疹(とびひ)