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貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)

 貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)は、主に足や腕にできる、境界線のはっきりした1~5cm程の円形の湿疹です。「貨幣状湿疹」という病名通り、患部がコイン(貨幣)のような形状をしているのが特徴です。

 小さな水ぶくれ(水疱)を伴うぶつぶつができ、中心部は赤く、じゅくじゅくしており、強いかゆみを伴います。

 貨幣状湿疹は、良くなったり悪くなったりを繰り返し、治療が長期化しやすい症状です。また、強いかゆみを伴うことから悪化しやすく、ひどいときは湿疹が全身へと広がることもあるため、注意が必要です。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)の症状

 貨幣状湿疹は、1~5cm程のコインのような円形(貨幣状)の湿疹ができる皮膚疾患です。

 強いかゆみを伴うのが特徴で、最初は小さなぶつぶつ(丘疹)や紅斑だったものが、皮膚をかくことでじゅくじゅくした滲出液がでて、かさぶたや鱗屑(りんせつ:うろこ状のカサカサしたくず)ができたりします。足や腕、腹部、臀部などに好発します。高齢者では、湿度が下がる秋から冬にかけて足を掻き壊して貨幣状湿疹が多発するが例が多く見られます。

 一時的に症状が落ち着いたとしても、また強いかゆみがぶり返すなど、良くなったり悪くなったりを繰り返します。症状が長引くことで、隣接した貨幣状湿疹同士がくっついて患部が大きくなったり、かゆみを伴う湿疹が全身に広がる「自家感作性皮膚炎」になったりするため、早期治療が重要となります。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)の症状

症例出典:公益社団法人日本皮膚科学会『手湿疹診療ガイドライン』より

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)の原因

 貨幣状湿疹の明確な原因は分かっていません。秋~冬にかけて悪化して多発することや中高年に多く現れることから、乾燥と掻き続けることが大きな原因と考えられています。

 また、虫刺され(虫刺症)かぶれ(接触皮膚炎)、乾燥によって生じる皮脂欠乏性湿疹、アトピー性皮膚炎金属アレルギーなどをきっかけに発症したり、それらの患部をかき壊すことで発症するとも考えられています。

 貨幣状湿疹が悪化して「自家感作性皮膚炎」を起こすと、眠れないほどのかゆみが全身に伴うこともあります。どのような症状がきっかけであっても、貨幣状湿疹へと移行する前に、各症状の誘引を見極めて、早期治療と原因除去をしていくことがとても重要です。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)の診断

 貨幣状湿疹には、皮膚の乾燥(皮脂欠乏性湿疹)、アトピー性皮膚炎の増悪、かぶれ(接触皮膚炎)、尋常性乾癬、表在性真菌感染症など、時に見た目が近い皮膚疾患が多くあります。

 そのため、視診しただけでは判断が難しい場合は、光学顕微鏡(クリティカル照明LED)を使って真菌の有無を調べたり、アレルギー検査や一部皮膚組織を採取して病理検査に提出する皮膚生検を用いながら、丁寧な診断を行っています。

貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)の治療

 ステロイド外用薬や抗アレルギー薬を用いた、かゆみや湿疹を抑えるための治療が基本となります。

 多くの場合、数週間程で改善が見られますが、貨幣状湿疹は一度落ち着いても再発しやすい症状です。悪化や長期化につながることもあるため、適切な経過観察行いながら、治療を進めていくことが大切です。

 また、症状の悪化や再発を防ぐためにも、患部をこするなどの物理的な刺激を避けること、保湿剤を使って皮膚のバリア機能を保つことなども必要です。

 発症部位や症状によって予防法も異なりますので、診察の際、一人ひとりのライフスタイルなどを考慮した上で、適切な対策方法を提案させていただきます。

 貨幣状湿疹へと移行すると考えられている以下の項目についても、予防対策としてご参考ください。

虫刺症

接触皮膚炎

アトピー性皮膚炎

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