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花粉症・花粉皮膚炎

 花粉症は、I型アレルギーに分類されるアレルギー性疾患のひとつです。日本人の5人に1人が発症しているとの報告もあり、“国民病”とも呼ばれています。

 花粉症と言えば、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどが代表的な症状ですが、「花粉皮膚炎」と言われる皮膚トラブルも“花粉症”のひとつです。花粉との接触によって、まぶたや頬、首などに、かゆみやかぶれが生じる症状です。

 花粉皮膚炎は、鼻水、目のかゆみなどの鼻炎症状がなくても起こることがあり、花粉症と気づかず、症状を悪化させてしまうことがあります。

花粉症と花粉皮膚炎

 花粉症は、スギ・ヒノキをはじめとする花粉が、鼻や目の粘膜に触れることで起こるアレルギー症状のことです。

 花粉症の約70%は、2~5月に飛散するスギ花粉が原因とされていますが、その他にヒノキ・カバノキ科の花粉(ハンノキ・シラカンバ)も症状を起こすことがあり、スギとヒノキ花粉は、タンパク質の構造が似ているため、スギ花粉症の人の多くはヒノキ花粉でもアレルギー症状がでることにより結果的に症状が長引きます。

春の花粉:スギ、ヒノキ
春の花粉:ハンノキ、シラカンバ

 夏はカモガヤ・オオアワガエリ・ハルガヤ・ギョウギシバなどのイネ科植物の花粉症を、秋はブタクサ・ヨモギ・カムナグラの花粉で秋の花粉症を発症することがあります。つまり、花粉症は年中起こりえる症状なのです。

夏の花粉:カモガヤ、オオアワガエリ
秋の花粉:ヨモギ、ブタクサ

画像出典:Thermo Fisher Scientific『みんなのアレルギー情報室』より


 なお、上記季節毎の花粉に対して花粉症がある方は、特定の果物や野菜で引き起こされる、花粉‐食物アレルギー症候群(PFAS)を合併することでも知られています。

 花粉症は、鼻炎症状のほかにも、皮膚が敏感になり、かゆみ、赤み、かぶれなどの皮膚トラブルを引き起こすこともあります。こうした花粉による皮膚トラブルを「花粉皮膚炎」と言います。花粉皮膚炎は、バリア機能が低下した皮膚で起こりやすいため、もともとアトピー性皮膚炎の素因があったり、乾燥肌の方は発症しやすい傾向にあります。

▼アトピー性皮膚炎については、下記ページを参照してください。

アトピー性皮膚炎治療

 花粉皮膚炎の患者さんのなかには、鼻炎症状が現れない方がいます。ある時期になると、皮膚が乾燥したり、肌荒れが起こりやすいという方は、花粉皮膚炎の可能性があります。花粉皮膚炎と気づかず、誤ったスキンケアをしたり、皮膚をかいたりすることで症状は悪化するため、自己判断でケアせず、早めに診察にてご相談ください。

 また、花粉による鼻炎症状が現れている方が、目をこすったり、鼻をかんだりして皮膚が傷つき、傷ついた皮膚に花粉が付着して皮膚炎を引き起こすこともあります。そのまま放置すると、湿疹が全身に広がり、治療が長引くこともあるため、花粉症・花粉皮膚炎は、早期治療、予防的治療が重要となります。

花粉症・花粉皮膚炎の検査

 花粉には、スギ、ヒノキをはじめ、さまざまな種類があります。またハウスダスト(ほこり)、小さなダニによって、花粉症・花粉皮膚炎と同じような症状が起こることがあります。そのため、治療を進めるにあたり、まずは何によってアレルギー反応が起こっているのか原因物質(アレルゲン)を特定することが必要となります。

 アレルゲンの特定検査には、血液検査(IgE抗体検査)、皮膚テスト(パッチテスト)を行います。複数のアレルゲンに対して症状を起こす方も多いため、当院では複数の反応を一度に検査しています。

 また、アレルギーの原因がはっきりしない方には、「View39」検査をおすすめしています。

 「IgE抗体検査」では13項目しか検査できないのに対して、「View39」では39項目のアレルギーを調べることができます。保険適応で受けられる上、花粉だけでなく、食物系のアレルゲンまで調べることが可能となっており、適切な治療選定を行う上で有効な検査です。

アレルギー検査39項目セット:View39 アレルギー検査39項目セット:View39

画像出典:Thermo Fisher Scientific『Viewアレルギー39』資料より

 注射が苦手な方、または採血が困難なお子さんには、当院では注射器を使わないアレルギー検査も可能です→8つのアレルゲンを測定する、20分で結果が分かるアレルギー検査:イムノキャップ ラピッド(ThermoFisher社 allergyinsider)

花粉症・花粉皮膚炎の治療

 外用薬(軟膏やクリーム)による皮膚炎の治療に加え、内服薬による症状を抑える治療を同時に行います。

 花粉皮膚炎の症状がない方でも、鼻炎症状が例年ある場合は、早期に花粉症治療を行うことで、万が一皮膚炎が発症しても、症状を軽度に抑えられることが期待できます。

スギ花粉症の舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

 当院では、スギ花粉症を診断された方に「舌下免疫療法」を行っています。

 「舌下免疫療法」は、舌の下からスギ花粉エキスを吸収させ、少しずつスギ花粉に慣れていく(減感作療法)ことでアレルギー反応を弱めていく治療法です。推奨される投薬期間は3〜5年と長く、できるだけ毎日服用する必要がありますが、治療によって長期的に症状を緩和させることが期待できる、これまでの症状のみ治療する花粉症治療とは異なる治療法です。

 「舌下免疫療法」は、スギ花粉が飛散している時期に治療を開始することができず、新規治療を行う場合は6~12月の間となるため、希望される方はご注意ください。

「舌下免疫療法」については、下記のサイトも参考にしてみてください。

アレルゲン免疫療法ナビ

よくあるご質問

  • Q. 花粉皮膚炎とは?

     俗に花粉症と呼ばれる疾患は、単純に眼が痒くなり鼻水が出るものではなく、スギ・ヒノキなどをはじめとする花粉が、呼吸器症状、消化器症状、咽頭症状、発熱などを引き起こす全身性疾患の一つと現在は考えられています。また、花粉が皮膚に接触することが原因で引き起こされる皮膚のかぶれ症状(花粉皮膚炎)が見られることもあり、飛散する花粉が引き起こす空気伝搬性接触皮膚炎の一つと考えられています。スギ・ヒノキ花粉による花粉皮膚炎は、2 月から5 月にかけて起こり、ブタクサ・ヨモギ花粉によるものは 10 月から 12 月にかけて発症しやすいです(秋花粉皮膚炎)。

  • Q. 花粉皮膚炎になりやすいのはどのような方ですか?

     花粉皮膚炎になりやすい方は主に2タイプです。

     (1)アトピー性皮膚炎などが基礎にある方
     (2)もとから眼や鼻の花粉症がある方

     花粉皮膚炎の症状は、湿布のかぶれなどとは少し異なり、赤いブツブツや小さい水ぶくれなどはあまり起こさず、じんましんのような浮腫んだような赤い皮疹(浮腫性紅斑・湿疹局面)が顔・眼まわりなどの露出部位、または首まわりなどの擦れやすい部位に起こりやすいと言われております。

  • Q. 治療はどのようなものですか?

     軟膏やクリームの外用剤による皮膚炎の治療に加えて、内服薬などによる花粉症自体の治療も同時に行います。花粉皮膚炎がまだない方も、眼や鼻の花粉症が例年ある場合は花粉症の治療を早めに開始し、万が一皮膚炎が発症した際の症状を弱く抑える効果が期待できます。
     さらに、皮膚バリアが傷ついている方に特に起こりやすいため、アトピー性皮膚炎など慢性的な皮膚炎がある方や乾燥肌がある方のみならず、皮膚炎がない方もスキンケアを行って花粉による影響を低下させることが望ましいと考えられています。

  • Q. 日常生活の注意事項はなんですか?

    (1)皮膚への影響を減らすために保湿をこまめに行う。
    (2)メガネやマスクによる目や鼻への花粉の接触を減らす。
    (3)帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。
    (4)上着やズボンなどは玄関で脱いで室内に入れない。
    (5)掃除をよくする。特に窓際を念入りに掃除する。
    (6)飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。
    (7)飛散の多い時は、窓、戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、短時間にとどめる。


【参考文献】
1. 花粉なう(MSD運営サイト
2. 第 45 回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 花粉皮膚炎のアップデート

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