接触皮膚炎(かぶれ)
接触皮膚炎は、いわゆる「かぶれ」のことで、何かしらの物質が皮膚に触れることで起こる皮膚炎のひとつです。
原因物資と接触することで、発赤やかゆみ、小さな水ぶくれ(水疱)などの症状が生じます。かゆいからと皮膚をかいてしまうと、症状をより悪化させてしまい、ひどい場合は「潰瘍(かいよう)」や「とびひ(伝染性膿痂疹)」などに進展することもあります。
接触皮膚炎を予防するためには、 原因物資を特定し、原因物資との接触を避けることが最も重要です。
接触皮膚炎(かぶれ)の原因と症状
接触皮膚炎の原因は、大きく「刺激性」と「アレルギー性」に分類されます。そこからさらに、以下の4種類に分けられます。
刺激性接触皮膚炎
強酸や強アルカリなど刺激の強い物質(油、洗剤・石けんなど)に触れることで炎症を起こすケースです。アレルギーに関係なく、誰にでも起こる可能性があります。
乾燥などで皮膚バリアが弱っていると、バリア機能が乱れた角質から刺激物資が侵入して、炎症を起こしやすくなります。
また、刺激刺激物質に繰り返し触れることで、症状を発症することもあります。例えば、石鹸やシャンプー、化粧品など、最初は皮膚トラブルが生じていなくても、毎日使い続けることで、徐々に刺激となり、接触皮膚炎を起こすことがあります。
医療従事者や理・美容師、飲食業のスタッフなど、日常的に化学薬品を取り扱ったり、水仕事をする方に多発する手湿疹の約7割は、刺激性接触皮膚炎だと言われています。
ほかにも、おむつをしている乳幼児や介護を受けている高齢者の方は、おむつかぶれ(おむつ皮膚炎)と呼ばれる接触皮膚炎を起こしやすく、注意が必要です。
症例出典:『皮膚科Q&A:かぶれ』公益社団法人日本皮膚科学会
アレルギー性接触皮膚炎
アレルギー反応を生じる物質(アレルゲン)が触れることで、皮膚炎を発症するケースです。
「刺激性接触皮膚炎」とは異なり、特定の物質(アレルゲン)にアレルギーを持っている人にだけ起こります。化粧品、外用薬、金属、植物など、対象となるアレルゲンは、人によってさまざまです。
また、アレルギーが起こるかどうかは体質などにもよりますが、一度アレルギーが現れるようになると、アレルゲンに少しでも触れることでアレルギー性接触皮膚炎が起きるようになります。
症例出典:『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』公益社団法人日本皮膚科学会
光接触皮膚炎(光アレルギー性接触皮膚炎、光毒性接触皮膚炎)
光接触皮膚炎のほとんどが、光そのものに対するアレルギーで起こる「光アレルギー性接触皮膚炎」です。
「光毒性接触皮膚炎」は、皮膚に何らかの刺激物質が触れた後、紫外線(UVA)を浴びることで皮膚炎を発症するケースです。通常の接触性皮膚炎とは異なり、紫外線(UVA)にあたらなければ、症状は起きません。また多くの場合、紫外線量の多い5~8月に発症します。
光接触皮膚炎を発症すると、皮膚が赤くなるだけでなく、強いかゆみ、発疹、水ぶくれ(水疱)など、ひどい日焼けのような症状が現れ、全身に症状が広がることもあります。
全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群
接触皮膚炎を繰り返し発症すると、刺激物質が触れたところだけでなく、全身の広い範囲で発疹、かゆみなどが起こります。
全身のアレルギー症状、喘息や鼻炎、腹痛など症状を伴い、ひどい場合にはアナフィラキシーショックにいたることもあります。
症例出典:『皮膚科Q&A:かぶれ』公益社団法人日本皮膚科学会
接触皮膚炎(かぶれ)の原因となる物質
接触皮膚炎の原因物資は、食物、日用品、植物など多岐にわたります。以下はその一例です。
日用品 | シャンプー、リンス、毛染め、洗剤、衣類、ゴム手袋 |
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化粧品 | 化粧水、乳液、ファンデーション、日焼け止め、アイシャドウ、口紅、ジェルネイル |
植物 | イラクサ、ウルシ、ヤマハゼ、ブタクサ、ドクダミ |
食物 | ニンニク、パイナップル、キウイフルーツ、アロエ |
金属 | アクセサリー、コイン、時計、歯科金属 |
医薬品 | 湿布、目薬、抗生物質、痛み止め |
参考出典:『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』公益社団法人日本皮膚科学会
金属アレルギーは、金属が汗や体液に触れると溶け出し、金属イオンとなって体内に入り込むことで起こります。そのため、日常的に身に着けているピアスなどのアクセサリーが原因で多発しやすい症状です。
当院では金属アレルギー対策を踏まえたピアス穴あけ(ピアッシング)を行っているほか、事前の金属アレルギー検査(金属パッチテスト)も行っています。
接触皮膚炎(かぶれ)の診断
接触皮膚炎の治療を進める上で最も重要なことは、接触皮膚炎の原因物質を特定することです。
しかし、接触皮膚炎には、真菌(カビの一種)などが原因で起こる白癬や疥癬、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など似たような症状がたくさんあります。
そこで当院では、パッチテストのほか、光学顕微鏡(クリティカル照明LED)、血液検査など、症状に応じて検査を行い、丁寧な診断を行っています。気になる症状が現れた際は、ご自身で判断せず、まずは診察にてご相談ください。
接触皮膚炎(かぶれ)の治療
接触皮膚炎の治療では、原因物質を避けることが重要です。特定できていなくても、原因物質の可能性があるものは、できるだけ避けるようにします。
その上で、ステロイド外用薬や抗アレルギー薬を用いて、炎症やかゆみを抑えます。特に症状がひどい場合は、ステロイド内服薬を使用することもあります。多くの場合、2週間程度で症状が緩和されていきます。
仕事などの関係で原因物質を避けることが難しい場合は、手袋を着用するなどして、原因物質が直接皮膚に触れないよう工夫することが必要です。また、ワセリンなどの保湿剤を使ったスキンケアを徹底することも有効です。乾燥を防いで、皮膚のバリア機能を整えれば、接触皮膚炎の治療になるだけでなく、予防としても効果を発揮します。
接触皮膚炎(かぶれ)の関連項目
アトピー性皮膚炎のほか、接触皮膚炎(かぶれ)に似た疾患に関する以下の項目もぜひ参考にしてみてください。