汗疱・異汗性湿疹(かんぽう・いかんせいしっしん)
手足の指、手のひら、足の裏などに、小さな水ぶくれができる皮膚疾患を汗疱・異汗性湿疹(かんぽう・いかんせいしっしん)と言います。いわゆる、手と足の「あせも」のことです。
春、夏の季節の変わり目に発症しやすく、秋になると症状が落ち着いてくるのが特徴です。
汗疱・異汗性湿疹の症状
異汗性湿疹は、手足に汗をかきやすい人(多汗症)や、春・夏の汗のかきやすい時期に多くみられる症状です。通常、左右両側の手足にみられます。
2mm~数mmの小さな水ぶくれ(水疱)が、手足の指、手のひら、足の裏に多発します。水ぶくれ同士がくっついて大きくなり、炎症を伴うこともあります。
かゆみや痛みを伴うこともあり、皮膚をかくことで水ぶくれが破裂して、びらん(ただれ)が生じることもあります。自覚症状がないこともあり、気が付いたら水ぶくれができていた、ということも少なくありません。
皮膚をかくなどして悪化させない限り、2~3週間で水ぶくれは自然と破裂し、鱗屑(りんせつ:皮膚表面からはがれ落ちるくず)となってはがれ落ちていきます。
症例出典:公益社団法人日本皮膚科学会『手湿疹診療ガイドライン』より
汗疱・異汗性湿疹の原因
多汗症の方、汗をかきやすい時期に多発することから、発汗が原因と考えられていますが、明確な原因は分かっていません。
発汗とは関係なく発症することもあり、近年では、金属アレルギー、アトピー性皮膚炎、薬剤投与などが要因となり発症するとの報告もあります。
金属アレルギーは、ピアスなど常に身に着けているアクセサリーや歯科治療で歯につめた金属などが、汗や体液に触れて溶け出し、体内に入り込むことでアレルギー反応を起こします。体内に吸収された金属が、汗として排出された際、汗疱・異汗性湿疹を発症するとも言われています。しかし、その詳細は不明です。
汗疱・異汗性湿疹の診断
手指や手のひらに、小さな水ぶくれがあり、ガザガザした鱗屑が目立つ場合は、汗疱・異汗性湿疹と診断されることが多いです。
しかし、汗疱・異汗性湿疹には、真菌(カビの一種)などが原因で起こる白癬や疥癬、接触皮膚炎(自家感作性皮膚炎)、手足口病など似たような症状がたくさんあります。
特に足指、足の裏にできている場合、水虫(足白癬・爪白癬)と勘違いされることが多く、「偽(ニセ)水虫」の代表とも言われています。水虫は、白癬菌というカビの一種が原因で発症するため、汗疱・異汗性湿疹とは発症原因が異なりますが、視診だけでは医師でも正しく判断することは難しい症状です。そのため、水虫などが疑われる場合は、光学顕微鏡(クリティカル照明 LED)検査を行い、真菌・カビの有無を確認しています。
また必要に応じて、血液検査、生検による病理検査を行うこともあります。全身に症状が広がっている場合などは、金属アレルギーが疑われるため、金属アレルギー検査を行うこともあります。
前述したように、汗疱・異汗性湿疹は診断の難しい症状ですが、当院ではさまざまな検査方法を行うことで、適切な診断、治療法の提案を行っておりますのでご安心ください。
汗疱・異汗性湿疹の治療
症状が軽い場合は、2~3週間で水ぶくれは吸収され、自然と改善されていきます。
治療ではありませんが、症状が軽く、かゆみもなければ、ヘパリン類似物質配合の保湿剤の使用をおすすめすることがあります。皮膚表面の角質を軟化させて汗の排出を促すことで、より早い改善が期待でき、再発防止にもなります。
水ぶくれがつぶれて炎症を起こしていたり、水ぶくれが大きくなっていたりする場合は、ステロイド外用薬(塗り薬)で治療します。かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬内服(飲み薬)を併用することもあります。
手指、手のひらに汗疱・異汗性湿疹が発症していると、どうしても外的刺激を受けやすく、悪化させてしまうことが多いです。そのため、水仕事を控えたり、手袋を着用するといった工夫が必要です。また、清潔な衣類を身に着け、汗をかいた肌を放置しないよう気を付けましょう。
汗疱・異汗性湿疹の関連項目
多汗症、水虫(足白癬・爪白癬)、金属アレルギーなど、以下の関連項目もぜひ参考にしてみてください。
多汗症(原発性腋窩多汗症)水虫(足白癬・爪白癬)
金属アレルギー