水疱症(すいほうしょう:天疱瘡・水疱性類天疱瘡)
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)とは
水疱症(すいほうしょう)とは、皮膚や粘膜に水ぶくれ(水疱)やただれ(びらん)を生じる疾患の総称です。
水疱症は、免疫の異常によって生じる「自己免疫性」のものと、遺伝子の異常による「先天性」のものに大きく分けられます※。ここでは、自己免疫性水疱症のうち代表的な、「天疱瘡(てんぽうそう)」と「水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)」について解説します。
自己免疫性水疱症は、本来、体を守る免疫の仕組みが、誤って自分の皮膚や粘膜の細胞を攻撃する自己抗体がつくられることで起こります。天疱瘡では皮膚の比較的浅い部分である表皮の中に、水疱性類天疱瘡では表皮の下に水ぶくれができます。この違いにより、水ぶくれの破れやすさや、症状の現れ方が異なります。
天疱瘡は、比較的稀な疾患です。水疱性類天疱瘡は高齢の方に多く、特に70歳以上で発症しやすい傾向があります。高齢化に伴い、患者数は増加すると考えられています。
※感染症ややけど(熱傷)などによる水ぶくれは含みません。
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)の症状
水疱症は、皮膚のどの深さに水ぶくれ(水疱)ができるかによって、大きく「天疱瘡」と「水疱性類天疱瘡」の2つのタイプに分けられ、それぞれ症状の現れ方が異なります。
いずれのタイプも水ぶくれがはっきり現れる前に、かゆみ、赤み、蕁麻疹(じんましん)のような発疹だけが先に出ることがあります。そのため、湿疹、蕁麻疹、接触皮膚炎(かぶれ)などと見分けがつきにくいことがあります。市販薬を使っても症状が改善しない場合や、赤み・かゆみ・水ぶくれを繰り返す場合は、注意が必要です。
天疱瘡(てんぽうそう)

天疱瘡は皮膚の比較的浅い層(表皮)に水ぶくれができるため、水ぶくれの膜が薄く、破れやすいのが特徴です。これを弛緩性水疱(しかんせいすいほう)といいます。水ぶくれが破れると皮膚がめくれたような状態になり、ヒリヒリとした痛みを伴うただれ(びらん)が起こります。
天疱瘡にはいくつかの種類があり、代表的なものに「尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)」と「落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)」があります。

尋常性天疱瘡は、天疱瘡の中で最も多くみられるタイプです。口の中に、痛みを伴う、なかなか治りにくいびらんや潰瘍ができることがあり、痛みで食事や会話がしづらくなることがあります。口の中だけの症状にとどまることもあれば、口の中と皮膚の両方に症状が現れることもあります。

一方、落葉状天疱瘡は、頭・顔・胸・背中など全身に赤み、かさぶた、フケのような皮むけ、浅い水ぶくれやびらんができます。尋常性天疱瘡とは異なり、口の中などの粘膜に症状が出ることはありません。
症例出典:『皮膚科Q&A:天疱瘡』公益社団法人日本皮膚科学会
水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)

水疱性類天疱瘡は、皮膚のより深い層(表皮の下)に水ぶくれができるため、パンパンに張った、破れにくい水ぶくれができるのが特徴です。これを緊満性水疱(きんまんせいすいほう)といいます。
水ぶくれが現れる前段階として、強いかゆみを伴う赤みが体や手足に生じることがあり、蕁麻疹に似た発疹、むくんだような赤みが出ることもあります。多くの場合、高齢の方にみられる症状です。
主に皮膚に症状が現れますが、口の中などの粘膜に水ぶくれやびらんが生じることもあります。
症例出典:『皮膚科Q&A:類天疱瘡(水疱症)』公益社団法人日本皮膚科学会
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)の受診タイミングと判断のポイント
水疱症は、帯状疱疹、水痘(水ぼうそう)、手足口病、汗疱・異汗性湿疹、接触皮膚炎(かぶれ)、疥癬など、症状が類似する疾患が多くあります。類似疾患との判別のためにも、気になる症状がある場合は、早めに皮膚科医に相談することが重要です。
・水ぶくれ(水疱)が繰り返しできて、なかなか治らない
・口の中がただれ、痛みで食事がとりにくく会話もしづらい
・市販の塗り薬を使っても、赤みやかゆみ、水ぶくれが改善しない
・高齢の方で、かゆみの強い赤みや水ぶくれが急に増えてきた
・発熱、強いだるさ、体に痛みがあり、症状が急速に広がっている
・口の中や喉の痛みで食事や水分が十分にとれない
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)の検査・診断
天疱瘡と水疱性類天疱瘡では、治療方針が異なるため、まずどちらのタイプかを見極めることが重要です。診断にあたっては、症状や経過を確認した上で、次の検査を組み合わせて行います。
・水ぶくれやその周囲の皮膚を採取し、顕微鏡で調べる病理組織検査
・血液中の自己抗体を調べる血液検査
・皮膚に自己抗体が沈着しているかを調べる蛍光抗体直接法
当院では、症状を丁寧に診察し、必要に応じて病理組織検査や血液検査を行います。蛍光抗体直接法などの専門的な検査や、入院を含む治療が必要と判断した場合は、連携する総合病院・大学病院などをご紹介しています。
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)の治療
水疱症の治療では、水ぶくれの新生を抑え、びらんや赤み、かゆみなどの症状を改善して、症状が落ち着いた状態(寛解)を目指して進めます。
天疱瘡の治療
天疱瘡は、全身の広い範囲に症状が及びやすく、口の中の粘膜まで症状を伴うことも多いため、ステロイド内服薬による全身的な治療が基本となります。
症状の程度によっては、免疫の働きを調整する薬を併用することもあります。水ぶくれやびらんが広範囲に広がっていたり、口の中の症状で食事がとりにくかったりなど、症状が重い場合は、入院しての治療が必要になることもあります。その際は、適切な総合病院や大学病院を紹介しますのでご安心ください。
水疱性類天疱瘡の治療
水疱性類天疱瘡は高齢の方に多くみられるため、治療では病気の症状だけでなく、感染症、糖尿病、骨粗しょう症など、ステロイド内服薬による副作用にも配慮することが大切です。
症状が限られた範囲にとどまる場合は、ステロイド外用薬を中心に治療することがあります。症状が広い範囲に及ぶ場合や、外用薬だけでは十分な効果が得られない場合には、ステロイド内服薬を用いることがあります。
治療期間について
天疱瘡・水疱性類天疱瘡のいずれも症状が落ち着くまでには数ヶ月かかることが多く、その後も薬を少しずつ減らしながら、再発がないか長期にわたって経過をみていく必要があります。
症状が落ち着いた後も、自己判断で薬の使用を中断すると症状が再燃することがあるため、注意が必要です。
指定難病の医療費助成
天疱瘡、水疱性類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)は、中等症・重症と診断された場合、難病医療費助成制度の対象となることがあります。また、軽症であっても高額な医療を継続する必要がある場合には、助成の対象となることがあります。
利用にあたっては難病指定医による診断の上、お住まいの都道府県・指定都市などの窓口へ申請し、認定を受ける必要があります。制度の対象や自己負担額は、重症度や所得などによって異なりますので、詳しくは診察の際にご相談ください。
よくある質問
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Q1. 水疱症は人にうつりますか?
水疱症は基本的に人にうつる病気ではありません。
水疱症(天疱瘡や水疱性類天疱瘡)は、自分の免疫が誤って皮膚を攻撃してしまう自己免疫が原因で、細菌やウイルスによる感染症ではありません。そのため、とびひ(伝染性膿痂疹)や水虫(足白癬・爪白癬)のように人にうつることは基本的にありません。
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Q2. 水疱症は治りますか?
水疱症は、適切な治療を受けることで水ぶくれや赤みなどの症状が落ち着いた状態(寛解)を目指すことができます。
治療を受けて比較的早く症状が和らぐこともありますが、再発を繰り返すこともあります。長期的に薬を調整しながら経過をみていくことが多く、自己判断で治療を中断しないことが大切です。
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Q3. 医療費の助成は受けられますか?
条件を満たす場合、指定難病の医療費助成を利用できることがあります。
天疱瘡および類天疱瘡は指定難病に定められており、中等症・重症に該当する場合のほか、軽症でも高額な医療を継続する必要がある場合には、医療費助成の対象となることがあります。
助成を受けるには、難病指定医の診断を受けた上で、お住まいの自治体へ申請して認定を受ける必要があります。詳しくは診察の際にご相談ください。
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Q4. 水ぶくれはつぶしても大丈夫ですか?
自分で水ぶくれをつぶしたり、皮をむいたりしないでください。
水ぶくれを自分でつぶすと、皮膚がめくれてびらんとなり、細菌感染を起こしやすくなります。掻くなどの刺激を避け、つぶさないようにすることが大切です。すでに破れてしまった場合や症状が広がってきた場合は、早めに皮膚科で処置を受けるようにしましょう。
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)の関連項目
水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)に関連した疾患などについて、項目も参考にしてみてください。
記事制作監修
成増駅前かわい皮膚科
院長 河合 徹














