皮膚腫瘍(できもの:ほくろ・イボ・粉瘤)の治療
皮膚腫瘍は、いわゆる“できもの”のことで、ほくろ、イボ、粉瘤などのことです。皮膚の表面にできるものから、内側にできるものなどさまざまな症状があります。種類や大きさ多種多様ですが、中には皮膚がんなど悪性のものもあるため、医師の診断が重要であり、皮膚腫瘍の種類に応じた検査と治療選択が必要となります。
皮膚腫瘍には、主に以下のような種類があります。
皮膚良性腫瘍 | 皮膚悪性腫瘍 |
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このように皮膚腫瘍には、種類が多いだけでなく、良性悪性があります。
当院では正確な診断のために、医療用拡大鏡検査(ダーモスコピー検査)で診たり、悪性が疑われる時は生検による病理検査を行っています。
こんなお悩みの方に
- できものがあるが悪性でないか不安な方
- ほくろ、イボがだんだん大きくなってきた方
- できものから出血がある方
- できものが化膿してしまった方
皮膚腫瘍(できもの)の種類
皮膚良性腫瘍
ほくろ
一般的に「ほくろ」と呼ばれているものの多くは、「母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)」という良性腫瘍を指します。
褐色~黒褐色の色素斑で、平らなものから隆起したものまで、大きさや形はさまざまです。年齢、性別に関わらず、体のあらゆる箇所で現れます。
稀ではありますが、一見「ほくろ」のように見えても、実は「基底細胞癌(きていさいぼうがん)」「悪性黒色腫(メラノーマ)」などの悪性腫瘍だった、ということもあります。ほくろが急激に大きくなるなど、気になる症状がある場合は、医療用拡大鏡検査(ダーモスコピー検査)などを用いて、良性か悪性かを適切に診断します。
脂漏性角化症(老人性イボ)
加齢や紫外線の影響などによって発症する、褐色~黒色の良性腫瘍です。
40代以降に現れることが多く、80代になるとほどんどの方に現れます。紫外線に当たりやすい、顔、頭部、手足などに発症しやすく、サイズや形には個人差があります。痛みやかゆみを伴うことはほとんどありません。
自然に消えることがなく、市販薬などで取り除くこともできません。良性腫瘍なので、放置していても健康上の問題はありませんが、美的観点から取り除くことがあります。
粉瘤(ふんりゅう:アテローム)
粉瘤は、皮膚の下で皮脂や角質などが溜まったもので、良性の皮膚腫瘍です。「表皮性嚢腫(ひょうひせいのうしゅ)」「アテローム」とも呼ばれます。
良性腫瘍ではありますが、独特の臭いが生じたり、化膿することがあるため、早めに切除することをおすすめしています。
当院では、局所麻酔による日帰り手術での治療が可能です。皮膚科専門医、がん治療認定医である院長のみが施術を担当するので、はじめての方でも安心してお受けいただけます。
汗管腫(かんかんしゅ)
思春期以降の女性の下まぶたに好発する、1~3mm程度のぶつぶつ(丘疹)した良性の皮膚腫瘍です。汗を出すエクリン汗腺が増殖することで発生します。
痛みなどの症状はありませんが、自然に消えることがないため、美容的観点から除去を希望される方が多い症状です。
稀ではありますが、下まぶたから頬へと症状が広がることがあり、時には胸部、腹部と、体にまで広がることもあります。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)
目元、鼻などに生じる1~2mmの白いぶつぶつ(丘疹)した良性腫瘍です。毛穴に角質が溜まることで生じます。
良性腫瘍なので放置しても問題ありませんが、白ニキビや汗管腫などと勘違いし、誤ったケアで皮膚を傷つけてしまうことがあります。
当院では、症状や部位に合わせて圧出法やレーザーを使い、傷跡を残さない稗粒腫除去を行っております。
脂肪腫
脂肪腫は、40代以上の女性に好発しやすい良性腫瘍で、名前の通り「脂肪のかたまり」です。
痛みや炎症と伴うことはありませんが、自然に消えることはなく、ゆっくりと大きくなっていきます。取り除くためには外科的手術が必要となりますが、大きさや部位によっては、当院でも手術が可能です。
傷跡が残らない、丁寧な除去手術を行っておりますので、症状が気になる方は気軽にご相談ください。
症例出典:公益社団法人日本皮膚科学会『皮膚科Q&A:アテローム(粉瘤)』より
血管腫
血管腫は、血管細胞の異常によって発症する良性腫瘍です。「血管奇形」と呼ばれることもあります。
「単純性血管腫」「いちご状血管腫」「老人性血管腫」など、症状によっていくつかの種類があります。いずれの場合も痛みなどはなく、放置していても問題ありません。しかし、症状によっては赤黒く表面が膨らみ、誤って触れることで、出血や痛みを生じることがあります。
部位などにもよりますが、血管腫のほとんどは、レーザー治療などで安全に除去することが可能です。
軟性線維腫(なんせいせんいしゅ:アクロコルドン)
首、脇など、皮膚の柔らかい箇所に多発する1~2mm程度のイボが典型ですが、中にはクルミ程度の大きさになるものもあり、「アクロコルドン」「スキンタッグ」と呼ばれることもあります。
中年以降に多く見られる症状で、皮膚の摩擦や紫外線などの影響が要因と考えられています。良性腫瘍であり、痛み・炎症などを伴うことはありませんが、脇など擦りやすい部位にできるため、不快感があり、除去を希望される方がいます。
軟性線維腫の大きさや部位などを踏まえて、医療用ハサミや電気メスで切り取ったり、レーザーを用いて取り除きます。
石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ:毛母腫)
毛穴の一部が石灰化することで生じる良性の皮膚腫瘍です。顔、首、腕などに好発し、0.5~3cm程度の塊ができ、水ぶくれ(水疱)の様に見えることもあります。
基本的に無症状ですが塊を押すことで痛みやかゆみを伴ることがあるため、気になる場合は除去をおすすめしています。
除去の際は、皮膚を切開して、皮膚内の腫瘍のみを取り除きます。切開範囲を最小にし、丁寧に縫合することで、ほぼ傷跡を残さずに石灰化上皮腫を取り除くことができます。
皮膚線維腫(ひふせんいしゅ)
皮膚線維腫は、肌色~褐色で、数mm~2cm程のやや硬い“しこり”ができる良性腫瘍です。虫刺されなどの小さな傷の後にできることが多いと言われており、腕や足でよく発症します。
痛みなどの症状はなく、悪性化することもないため、経過観察をしても問題ありません。しかし、発症部位などによっては、衣類に擦れて不快感があったり、美容的観点から除去を希望される方もいます。
除去を希望される場合は、切除手術にて、丁寧に腫瘍を取り除きます。
エクリン汗孔腫(かんこうしゅ)
エクリン汗腺という、汗を出す管を形成する細胞が増殖することで起こる良性腫瘍です。
米粒くらいの赤色の盛り上がりで、痛みなどの症状はありません。足底、手の平などでよく発症します。
良性腫瘍ですが、自然に消えることがなく、稀に「汗孔癌(かんこうがん)」へと悪性化します。そのため、切除手術で取り除くことが多いです。
皮膚悪性腫瘍
基底細胞癌(きていさいぼうがん)
基底細胞癌は、日本人に多い皮膚がんの一種です。高齢者の目周り、鼻、耳など、顔面に好発します。
黒色~灰黒色のぶつぶつとした盛り上がりで、ゆっくりと大きくなり、徐々に中央部が崩れて潰瘍をつくります。転移することは稀ですが、潰瘍を切除しない限り、周りの正常組織を破壊しながら増殖していきます。出血することもあるので、早めの切除処置が大切となります。
基底細胞癌は、視診しただけで診断することもできますが、より正確な診断のため、当院では超音波検査・CT・MRIなどの画像検査や生検を提案させていただくこともあります。その場合は、必要に応じて適切な連携病院を紹介いたします。
扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)
扁平上皮癌は、「有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)」とも呼ばれ、「基底細胞癌」に続いて日本人に多い皮膚悪性腫瘍です。
基底細胞癌と同じく高齢者に好発しやすく、紫外線が当たりやすい顔や手に生じます。また、過去に火傷や怪我をした傷跡(瘢痕)に発症することも多いです。
小さなコブ(瘤)ができたと思ったら、数ヶ月で急速に大きくなります。放置して細菌感染を起こすと独特の悪臭を放つこともあります。扁平上皮癌はリンパ節などに転移する可能性が高いため、気になる症状がある場合は、早急に診察にてご相談ください。
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ:メラノーマ)
シミの原因であるメラニンを作り出すメラノサイト(色素細胞)の悪性腫瘍です。紫外線を浴びやすい手足などに発症しやすく、“ほくろのがん”とも言われるように、ほくろから生じることもあります。
ほくろのようにも見える黒色の盛り上がりで、いびつな形をしているのが特徴です。リンパや血液を介して転移しやすい悪性腫瘍のため、早期発見・早期治療が大切となります。
当院では正確な診断のために、医療用拡大鏡検査(ダーモスコピー検査)で診たり、生検による病理検査などを行うほか、必要に応じて適切な連携病院を紹介しています。
日光角化症(にっこうかっかしょう)
高齢者の頭、顔、手などに多く見られる、早期皮膚がんの一種です。長期的に紫外線を浴び続けてきたことにより発症します。「光線角化症」「老人性角化症」とも呼ばれています。
数mm~2cmの紅斑(赤み)で、表面にカサカサとした角質やかさぶたを伴います。平らな紅斑であることがほとんどですが、角のようにザラザラが隆起することもあります。
当院ではまず、医療用拡大鏡検査(ダーモスコピー検査)や病理検査など行って症状を診断します。その上で、症状に合わせて、切除手術、塗り薬による免疫治療、凍結治療などを行います。
隆起性皮膚線維肉腫(りゅうきせいひふせんいにくしゅ)
隆起性皮膚線維肉腫は、100万人に1~5人が発症すると言われる希少がんの一種です。20~50代の男性が発症しやすいとされています。
皮膚の真皮層を構成する「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」から発生することの多い肉腫(悪性腫瘍)で、発症すると、皮膚の奥に“しこり”ができます。症状が進行すると、“しこり”は大きく、硬くなり、皮膚から突出するようになします。
隆起性皮膚線維肉腫は、再発リスクが高いことから、肉腫(悪性腫瘍)を含めて周辺組織を切除することが必要となってきます。当院では、診断の上、必要に応じて連携病院を紹介しています。
汗孔癌(かんこうがん)
汗孔癌は、「エクリン汗孔腫(かんこうしゅ)」が悪性化したものです。高齢者の下肢(足)に好発する症状です。
エクリン汗孔腫は、汗を出す管のひとつ、エクリン汗腺の細胞が増殖することで発症します。赤くぶつぶつと隆起したエクリン汗孔腫は、痛みやかゆみなどを伴わない良性腫瘍です。しかし、自然に消えることがなく、稀に悪性化して汗孔癌へと移行します。
汗孔癌かどうかの判断には、緻密な診断が必要となります。汗孔癌の治療には切除手術を行いますが、症状によって、エクリン汗孔腫(良性腫瘍)であっても切除をおすすめすることがあります。
メルケル細胞癌
高齢者の頭、顔にできる赤い“しこり”状の悪性腫瘍です。10万人当たり0.44人程度が発症する希少がんの一種ですが、年々発症率が増加しています。
「メルケル細胞」は、指先などの感受性の高い皮膚に多く存在し、触覚感度機能(機械受容器)を有すると考えられている細胞です。この「メルケル細胞」が増殖することで、メルケル細胞癌が発症します。痛みなどの症状はありませんが、急速に成長する傾向があり、リンパ節によく転移します。
発症箇所や症状から、医師でも湿疹やアトピー性皮膚炎と間違えることも多く、適切な診断が重要となります。
Bowen病(ボーエンびょう)
高齢者の方によく発生する、早期皮膚がんの一種です。顔や手など、紫外線によく当たる箇所に、赤色~茶色のガサガサした腫瘍ができます。
Bowen病は、皮膚の一番外側にある表皮層にがん細胞が溜まっている状態で、ゆっくりと進行していきます。症状が進行すると、腫瘍が手の平ぐらいの大きさが、それ以上に大きくなることもあります。皮膚の深いところまでがん細胞に浸食されると、転移を起こすことがあるため、早期に取り除くことが重要です。
当院では、病状の進行度などを含めて適切な診断を行うため、医療用拡大鏡検査(ダーモスコピー検査)や病理検査などを行っています。病状が確認できたら、切除手術で取り除きますが、必要に応じて適切な連携病院を紹介させていただきます。
皮膚腫瘍(できもの)治療のポイント
適切な検査
皮膚腫瘍は、種類や大きさがさまざまで、パッと見た外観だけでは判断がつかないものが少なくありません。
適切な検査で得られた正しい診断に基づいて良性悪性を判定し、治療法を決めていきます。 中には、超音波検査・CT・MRIなどが必要となるケースもあり、医療連携のある病院に紹介し、さらに専門的な検査を行うこともあります(ご希望の病院については随時相談可能です)。
傷跡を最小限にする治療
ほくろやイボなど、皮膚腫瘍は、レーザーや手術により除去します。
顔などにある場合、いかにきれいに、傷跡が最小限になるよう除去することが大切です。当院院長は、美容皮膚科における経験・技術ももつため、ただできものを除去するのではなく、傷跡と痛みが最小限となる治療を行っています。
皮膚腫瘍(できもの)の検査
皮膚腫瘍は、見るだけでは分からないことが多いため、ダーモスコープで患部を拡大して観察するほか、必要なら生検または全切除して、病理検査を行います。
ダーモスコピー検査
ダーモスコープという拡大鏡を使用して、皮膚の状態を診察する検査です。
偏光レンズによって、皮膚内部の色や構造を確認することができるので、肉眼で見ただけでは判断が難しい皮膚の状態を詳しく把握することができます。
痛みを伴わない簡単な検査で、皮膚腫瘍(できもの)が良性か悪性かの判断に使用します。
当院で使用しているダーモスコープ(DZ-S50)とダーモカメラ(DZ-Z100)についての紹介はこちらをご覧ください。
皮膚生検・病理組織検査
皮膚組織の一部を切除することを「皮膚生検」と言います。切除した皮膚組織を顕微鏡で細かく観察するのが「病理組織検査」です。
炎症を起こしているか、細胞がどのようなパターンかなど観察して、良性か悪性かを診断します。
皮膚組織は、局所麻酔をしてから、数ミリ程度切除します。場合によって縫合もしますが、切開部分はわずかなので、傷跡はほとんど残りません。
皮膚腫瘍(できもの)の治療選択
検査の結果、良性のできもの(ほくろ、イボ、粉瘤など)については、レーザーや切除による手術で治療を行うことができます。
どちらも日帰りでできる治療です。
なお、日帰り手術が可能である範囲を超えた手術、全身麻酔が必要な手術、専門領域の異なる手術については、医療連携のある病院に紹介し、さらに専門的な治療をすることもあります(ご希望の病院については随時相談可能です)。
レーザー治療
レーザーで患部を除去する治療で、比較的小さなほくろ、イボなどに有効です。ピンポイントでの治療ができるので、患部以外の皮膚を傷つける心配がありません。
レーザーを照射したところは、テープで保護してもらいますが、1~2週間程度で落ち着き、傷跡もほとんど残りません。
当院で使用している、高性能スキャナーにより、従来機よりも傷跡を少なくきれいにほくろ・イボを除去することができるスキャナー付き炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)アキュパルスについてのご紹介はこちらをご覧ください。
切除による手術
隆起したほくろやイボは、メスを使って切除します。
大きさなどによって縫合が必要となりますが、組織を完全に切除するので再発することはほとんどありません。縫合しても、傷跡はわずかで時間とともにほとんど目立たなくなります。
なお、腫瘍の種類、部位や大きさによっては、より設備が整った総合病院や大学病院への紹介が必要となることがありますので、ご了承ください。
皮膚腫瘍(できもの)治療の流れ
ドクター診察・カウンセリング
皮膚科専門医である院長が、丁寧に腫瘍の診察をします。
検査の必要性、治療法や注意点、アフターケアについて説明しますので、ご不明な点や不安なことがあれば何でもご質問ください。
検査・治療法の選択
ダーモスコピーを用いて腫瘍の状態を判断したら、治療法や皮膚生検の必要性を判断します。
レーザー治療、切除による手術
症状に合わせて、レーザーや手術による治療を行います。
どちらも日帰りでできる簡単な治療となり、治療当日は飲酒や激しい運動など一部制限はあるものの、ほとんどいつも通りお過ごしいただけます。
抜糸・結果説明
縫合した方は、7~14日後に抜糸のためご来院いただきます。
病理組織検査は、手術した日からおよそ2週間で検査機関から返送され、詳しく結果説明を行います。
アフターケア
施術後に気になることがありましたら、気軽にご相談ください。
よくあるご質問
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Q. 皮膚腫瘍の切除手術は保険適応となりますか?
悪性腫瘍が疑われたり、良性腫瘍でも腫瘍の種類によって手術が必要と判断した場合は、保健適応となります。診察時にお気軽にご質問ください。
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Q. レーザーや切除治療は痛いですか?
どちらも治療を行う際は、局所麻酔を行います。麻酔をするとき針を刺す痛みがありますが、治療中はほとんど痛みはありません。治療中に痛みがあれば、適宜追加しますのでご安心ください。
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Q. 皮膚腫瘍の治療後は傷跡が残りますか?
レーザーの場合、比較的小さな皮膚腫瘍の治療となることもあり、治療後はほとんど傷跡は残りません。
症状にもよりますが、切除の場合も、傷跡が残りづらくなるよう丁寧に縫合します。術後はしばらくは薄く傷跡が残りますが、時間とともに目立たなくなります。 -
Q. 皮膚腫瘍が悪性だったときや精密検査が必要となった場合はどうしたらよいでしょうか?
診察、検査の結果、総合病院での精密検査が必要と判断した場合、適切な病院を紹介しますのでご安心ください。
皮膚腫瘍(できもの)治療 の料金
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関連項目
粉瘤稗粒腫
脂肪腫